池袋の「一軒め酒場」で、チューハイを3杯いれてから、湘南電車にのる。
鎌倉へは、1〜2年に1度くらい行っているのに、江ノ島はこの前にいつ行ったか思い出せないくらい、ひさしぶりだ。
仕事あけで寝不足、アルコールもはいっているので電車のなかで、すこし眠った。
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鎌倉でおりて、そのまま江ノ電へ乗り換える。狭い家と家のあいだを走っていると、三ノ輪から早稲田までの都電を連想する。
しかし、窓の外に海が見え出すと、ここからは江ノ電の風景になってくる。
江ノ島海岸駅で降りて、みやげものや、食堂、旅館などが並んだ観光地らしい道を、海に向かって歩く。
学生時代、オヌキ、フミカツと3人で江ノ島の旅館に1泊したときのことを思い出す。若かったな。いまは、二人との交流も絶えてしまった。
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長い橋を海風に吹かれながら歩いていると、山川方夫(やまかわまさお)の「展望台のある島」を思い出した。ちいさなころから江ノ島にきていたので、読み出して小説の舞台が江ノ島なのは、すぐにわかった。
山川方夫を、ひさしぶりに読み返してみようか、とおもう。
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島のなかは、坂の凹凸が多いので、歩いているだけで、けっこうへばった。池袋で飲んだ、まだ醒めないお酒がのこっているせいかもしれない。
島の突端まできて、岩のうえにすわりながら、しばらく海を見て、荒い息が整うのを待つ。
いい天気で、海がキラキラ光っていた。
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島の突端までくるうちから、帰り道はどこかでお酒を飲もうとおもっていたが、できれば海の見える見晴らしのいいところがいい、とおもい、海の突端からすこしあがったところで、食堂へ寄りこむ。
「まだまだ島の帰り道は長いのにな」と、心配でもあったけれど、すこし濃すぎる焼酎の水割りを飲みながら、だんだんに暮れていく海の風景をたのしんだ。
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鎌倉駅の近くに大きな本屋があって、むかし(1983〜1984年)、ここで鎌倉文庫で発刊していた里見弴の、志賀直哉との満州旅行について書いた、『満支一見』を買ったことなど、思い出す。
その本屋さんは、いまもあった。きょうも、なにかおもしろい本があればとおもったが、とくに見つからなかった。
もうすこし飲みたいので、安そうな居酒屋をぶらぶら探したが適当なのが見つからず、ものたりないまま帰りの電車に乗る。