かぶとむし日記

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ジョナサン・スウィフト作『ガリヴァー旅行記』〜「馬の国」(1727年)


ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)

ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)


ガリヴァー旅行記』の第4編「馬の国」では、ヤフーという醜悪な家畜が登場する。


ヤフーは貪欲で、征服欲が強く、争いを好む。彼らは、エサを十分に与えても、自分の取り分を増やすために、醜い争いをはじめる。


ガリヴァーはある日、自分がヤフーと間違えられたことにショックを受ける。じっさい、ヤフーの外見は、人間に似ていなくもなかったのだ。


ガリヴァーは、知的で優しく争いを好まない馬(フウイヌム)の国に心を寄せ、それと同時に、ヤフーへの嫌悪が、人間への憎悪につながっていく。


領土を奪い合い、小国を侵略する人間が、ガリヴァーには、ヤフーそのものにしか見えなかった。


最後にガリヴァーは、人間の国へ戻るが、人間が近づくと(それが妻でも)ひどく脅え、唯一馬小屋を安住の場所とするようなる。



スウィフトが描いた『カリヴァー旅行記』の最終編「馬の国」は、「小人の国」や「大人の国」からだけでは想像もつかない、痛烈な人類への風刺が描かれた小説です。


いま、この作品を再読して、寓話というにはあまりに切実で、人類はスウィフトが18世紀に発した警鐘から一歩でも進んだのだろうか、と考えてしまいました。