かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

矢口史靖監督『サバイバルファミリー』を見る(2月11日)



2月11日土曜日、妻とイオン板橋の映画館で待ち合わせ、午前9時25分から矢口史靖(やぐち・しのぶ)監督の『サバイバルファミリー』を見る。


予告編を見ておもしろかったのと、大河ドラマの『真田丸』(三谷幸喜脚本)で、秀吉(小日向秀吉は絶品でした)を演じた小日向文世が出演しているので、公開をたのしみにしていた作品。


なぜか電気や水道がとまって、日常の暮らしが崩壊してしまう。都会から田舎へみんな疎開していくが、車もなぜか走ることができず、移動は自転車か徒歩。高速道路を、自転車や徒歩のひとたちがぞろぞろ移動していく風景は奇観。


この作品では、電気や水道が止まったという日本の危機を、全体からとらえるのではなく、鈴木家(父=小日向文世、母=深津絵里、長男=泉澤祐希、長女=葵わかな)の4人に焦点をあてて描いていく。


こうるさくて存在感の薄い父と、反抗的な子どもたちが、そろって都会から九州の実家へ疎開する。その道中がドラマの中心。期待通り、小日向文世はうまいし、深津絵里もいい。さらに子どもたちを演じた若いふたりもいい。なかでも、ちょっとふてくされている長女役の葵わかなが見ていてたのしい。


自転車での九州までの家族の旅。不便な旅でさまざまな経験を経て、この家族は互いの大切さに気づいていく。結論は、そういうことだけれど、そこまでの道程がひとつひとつよくできているので、なっとくがいく。見ていてじつにたのしい。こういう場合、自分たちならどうするだろう、なんて考えて見てしまう。


好きなシーンがある。サバイバルを楽しんでいる家族に出会う。疲労困憊している鈴木家には、眩しいような元気な一家だ。鈴木家の妻も、子どもふたりも、その家族の中心にいるたのもしいおとうさん(時任三郎)に尊敬の目を向ける。それが父としての面目を失ったようで小日向文世は気にいらない。。次のシーンでは、小日向だけ家族に少し離れ、仏頂面しながら自転車を走らせている。その表情がいい。父は、家族に軽視され、威厳を失うのがいちばんつらいのだ(笑)。


地震国日本では、いつ自分たちがこのような「サバイバルファミリー」になってしまうかわからない。東北大地震を経験してから、それをよりリアルに感じるようになった。だから、鈴木家の経験する困難がコメディでも絵空事には感じない。だから、いつのまにか細部に自分たちがそうなったら、なんてことを重ね合わせながら見てしまう。よく笑った。最後の終わり方も、感心してしまった。


『サバイバルファミリー』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=rHgjhgnPxtE