1月27日㈯。
午前、アパート近くの「コメダ珈琲」で、村木嵐の『まいまいつぶろ』(キンドル版)を読む。
以下、キンドル版の書籍案内。
口は回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)」と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重。
しかし、幕府の財政状況改善のため宝暦治水工事を命じ、田沼意次(たぬま・おきつぐ)を抜擢した男は、本当に暗愚だったのか----・
廃嫡(はいちゃく)を噂される若君と後ろ盾のない小姓、二人の孤独な戦いが始まった。
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生まれたとき、へその緒が首にまきついたため、幼いころから障がいをもってしまった長福丸(ながとみまる。のちの第九代将軍家重)。身体が不自由なだけでなく、彼の発する言葉(声)を誰も理解できない。
第八代将軍・徳川吉宗は、長男である長福丸を廃嫡し、弟の宗武を次の将軍に抜擢しようか迷っていた。
が、あるとき、そばにいた小姓のひとりが、長福丸の「声」に反応を示す。長福丸と小姓は、何か会話らしきことをしている。小姓には、長福丸の「声」が理解できるようだ。
小姓は、求められるままに長福丸の「声」を、言葉として周囲に伝える。
それ以後、小姓は、長福丸の「口」として、彼の意思を伝える役目につく。
長福丸が、小姓の「口」を借りて言葉を放つようになると、暗愚な自分の意思を持たぬ若君ではなく、明晰な頭脳を持っていることが明らかになってくる。
しかし、小姓が伝える言葉は、本当に長福丸のものなのか、小姓は、長福丸の「声」を自分の意思に置き換えていないか。
小姓が言葉にする長福丸の「声」に、周囲の疑惑が高まる。
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長福丸(のちの家重)と小姓との「二人三脚」の生涯が語られていく。
話の進め方がおもしろい。前の段落では中心の役割を果たしていた主要人物が、場面が変わると、あっけなく亡くなっている。
芝居で、濃厚な一場面が展開しているのに、舞台が反転すると、十数年が経っている、といった感じ。具体的にそういう芝居を知っているわけではないが。
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午後2時半。日暮里駅でfujimotoくん、yosidaくん、トミボーと会う。駅前の「又一順(ユーイシュン)」という中華料理へはいって飲みはじめる。
fujimotoくんは、山口県から。yosidaくんは、栃木県からやってきた。トミボーは、日暮里に近い「堀切菖蒲園駅」に住んでいる。ふたりは、昨晩そこへ泊まって、3人一緒にやってきた。
珍しく本の話が出た。
fujimotoくんは、「横道世之介シリーズ」を読んで(むかしわたしがすすめたことを思い出したのか)、酔った勢いで「ぼくは横道世之介を尊敬しています」とか「ぼくの目標は横道世之介です」というLINEをときどき送ってきた。わたしだけでなく、妻にも送ってきたようだ。
この日も、横道世之介の話をしばらくする。小説は、時間がときどき過去に行きつ戻りつする。fujimotoくんが、全シリーズの出来事を、年表みたいに時代順に並べたプリントをわたしにくれた。
もう1軒、ハシゴ……。
妻に電話すると、帰ってくるとかえって危ないから、みんなといっしょにトミボーの家に泊めてもらいな、っていわれる。
京成線「堀切菖蒲園駅」から徒歩15分。トミボー(独身)のマンションへ全員が泊まる。午前2時くらいまで「家飲み」して、雑魚寝した。