かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

解散するビートルズへのラヴ・レター


ringoさんの記事へ、コメントが長くなりそうなので、ぼくのブログからトラック・バックさせていただきます。コメントにはかなり個人的な想い入れがはいりますが、寛容にお読みくださいね。



■「ビートルズ世代」なんて、あの頃ありませんでした


ウィズ・ザ・ビートルズ
【写真】:曲の中身はちがいますが、日本では、このジャケットで最初のアルバム『ミート・ザ・ビートルズ』が発売されました。


拝見しながら、タイム・トリップして「1970年のビートルズ・ファンの少女」とお会いしているようなおもいがしました。ぼくは、1964年からビートルズの熱狂的なファンでしたが、周囲にビートルズが好きな女の子がひとりもいませんでした。ですから、あの頃、彼女たちが何を考えているかわからなかったんです。

ringoさんは、想い出されませんか。

あの頃、同じビートルズ・ファンでも、男の子と女の子って、それほど交流がありませんでしたね。女の子は、ビートルズ以外の男の子に目もくれなかったでしょ(笑)。男の子も、ビートルズ・ファンの女の子は、スクリーンに向かって絶叫したりしているので、怖くて近寄りがたい存在でした(笑)。


A Hard Day's Night ? ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!
【写真】:世界中のビートルズ・ファンを魅了した映画『ビートルズがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!』のサントラ盤。しかし、日本盤のジャケットは違いました。


それに、いま私たちの年齢が「ビートルズ世代」なんていわれるのも、ウソですね。「ビートルズ世代」なんて実はなくて、ラジオを通して全国のファンが一同に集まったとき、やっと1つの<集合した声>になっていたんです。

ですから、ラジオを消せば、ビートルズ・ファンのたいていの子が、、仲間や学校のなかで<浮いていた存在>だったはずです。乱暴な総括ですけど、ビートルズ・ファンにとって、1960年代はそんな時代でした。

1960年代も後半になると少し違ってきたかもしれませんが、でも今度は、ロックを好きな連中がビートルズを蔑む時代がやってきました。ストーンズ・ファンやクリーム・ファンに比べれば、ビートルズ・ファンは、そのことを言い出しにくいという、どことなく世に身を隠す<日陰者(笑)>でした。

そんな時代ですから、たぶん、この<1970年某ファン・クラブの機関誌へ投稿した女の子>が、ぼくの知るなかで、リアルタイムでは、一番古いビートルズ・女性ファンの声かもしれません。

さてと、前置きが長くなりました(笑)。


■10代のringoさんの文章は、解散するビートルズへのお別れのラブ・レターだと思いました


そろそろringoさんの文章の本文へはいらなきゃ、いつまでも終わらない(笑)。

10代のringoさんが、「某ファン・クラブの機関誌」(「ビートルズ・シネ・クラブ」……現在の「ビートルズ・クラブ」ではないかとおもいますが【訂正】)に投稿した文章を、感心して拝見しました。本を読むのは得意でない、と現在おっしゃるringoさんが、おもしろいですね。何を調べられたのかわかりませんが、当時ビートルズについて書かれた信憑性のある資料がそれほどあったわけではないのに、その限られたなかで、ringoさんは、ちゃんとビートルズの足跡をおさえていらっしゃったんですね。

いまでも、それほど大きな修正はありませんよね、ビートルズ・ファンのみなさん?(笑)

思えば、ringoさんこの一文は、まもなくグループの存在がなくなってしまう(あるいは、もう事実上なくなってしまっていた)、ビートルズへの、お別れのラヴ・レターのようです。ですから、客観的に書かれているようでいて、どこかに大好きなひとが去ってしまったような、そんな寂しさと苛立ちが漂っています。

【訂正】某ファン・クラブの機関誌」が「ビートルズ・シネ・クラブ」だというのは、わたしの早トチリでした。ringoさんがコメントに訂正されているとおりです。どうも、すみません。


■後からグループにはいったリンゴの苦労


10代のringoさんは、リンゴを<リンゴー>と表記していますけれども、これは一般的な印象としてはぼくにはありません。「ビートルズ・シネ・クラブ」はそうだったのでしょうか。レコードの表記は<リンゴ・スター>だったような記憶しかありませんが、表記が乱れていたのかな。そういえば、<ジョージ・ハリスン>とも<ジョージ・ハリソン>とも書かれていましたね。これは、いまでもかな? それはどうでもいいのですが(笑)、、、

そのリンゴのデビューのころにスポットをあてているのが、ビートルズのなかでも、とりわけリンゴが大好きだった(もちろん、4人が好きでしょうけど)ringoさんらしいですね。

ringoさんは、ビートルズにデビュー直前にはいったリンゴは、ビートルズの下積み時代の苦労をしていない、それはリンゴの<得>だけど、バンドのなかで、それがひけめににならなかっただろうか、そんな心配をされています。ファンらしいやさしさですね。

でも、ringoさんもいまでは、ご承知のとおり、リンゴはロリー・ストーム&ハリケーンズのドラマーとしてハンブルグにいき、ビートルズと似たりよったりの下積み経験をしているんですね。そして、ビートルズのドラマーだったピート・ベストの代わりに、ビートルズのステージでドラムを叩いたりしています。ジョージ・ハリスンジョン・レノンポール・マッカートニージョージがもっともリンゴに熱心だったといいます)が、ピート・ベストの代わりにリンゴを熱望したのは、こうした昔の経験が記憶にあったわけです。

大丈夫ですよ、10代のringoさん、リンゴは望まれて嫁いできたビートルズの大切なお嫁さんでしたから、決して粗末に扱われることはありませんでした。ただ、リンゴの実力を知らないプロデューサーのジョージ・マーチンは、最初違いましたね。

ringoさんがおっしゃるように、アンディ・ホワイトでしたか、セッション・ドラマーを用意してデビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」はレコーディングされました。待機したまま参加できなかったリンゴは、傷ついたようですが、その後リンゴの参加ヴァージョンもレコーディングされ、シングルではこちらが発売されました。

デビューころ、ビートルズのもっとも重要な女性ともだちであり、亡くなったベーシスト=スチュアート・サトクリフの恋人でもあったアストリット・キルヒヘルは、こういっています。

「はじめてビートルズのリンゴを見たとき、彼はずっと前からグループにいたようにバンドにぴったりでした」ですって(笑)。


■リンゴは、最初から名ドラマー!?


リンゴのことで、少し10代のringoさんにぼくの補足をすると、リンゴは、ビートルズの初期から優れたドラマーだったと、ぼくはおもいます。若いringoさんは、ドラム以上に、リンゴのルックスや人間に惹かれたので、さほど重要視していなかったかもしれませんが、ぼくはリンゴのドラムに惹かれていました。

ノリのいい畳み掛けるようなビート、バラードに変化を与える繊細さ、リンゴのドラミングは、今もまだ過小評価されているような気がします。

ビートルズ・ファンのみなさんに聴いてほしいのです。高音や低音がクリアになった現在のCDで、ぜひドラムをメインにビートルズ・ナンバーを聴いてみてください。デビューからリンゴがどれほど歌ごころのあるドラマーであったか、きっと見直されるのではないか、とおもいます。

ビートルズ・サウンド大研究」を書いたチャック近藤氏は、こんなことをいっています。

「リンゴは最初からバンドで一番の優れたプレイヤーだった。彼のドラマーとしての技術は、バンドの音楽が複雑になってくるのを、先にいて待っていたのではないか、とおもえるほど」(大意)


ビートルズ革命


ringoさんがいう「売って売って売りまくろうとした」時代の作品でも、いまふりかえれば当時のほかの歌手やバンドをはるかにしのぐ革新的なサウンドであったことは、むしろ時代を経るにつれて明らかになっています。初期も中期も後期もあなどれないのがビートルズです。10代のringoさんは、少しビートルズを謙遜して、語っておられるかもしれませんね(笑)。

ラバー・ソウル
ラバー・ソウルからはじまった(『HELP!』からはじまったというひともいますし、のちの『リボルバー』から、と考えているひともいます)、第二期ビートルズ革命、そしてオピニオン・リーダーとしても期待された黄金期、やがて迎える爛熟期というか、グループの終焉期というか、そういう時代までの変遷は、10代のringoさんが1970年に書かれたことと、現在も大きな違いはないとおもいます。

かくして、ビートルズはアルバム1枚ごとに斬新な革新を実現し、やることをやって、あっさり解散してしまうのですね。

【注】:ビートルズ革命が、約7年ほどの短期間に行われていったことが驚異的です。


ビートルズの解散

レット・イット・ビー
もう歴史的な事実となってしまったビートルズの解散。しかし、仲のよかったデビュー前からビートルズは、なれあいや妥協のにあわないグループでした。最後は、個性と才能がぶつかりあって、実にビートルズらしく解散してしまいます。

10代のringoさんの次の感想は、リアルタイム・ファンの意見を代表しているようにおもいます。

とにかくビートルズは分裂した。ポールの抜けたビートルズなんて考えられない。それは、ジョンが抜けてもリンゴーが抜けても同じことだが。ビートルズの時代は終わったのかもしれない。私は、これまでビートルズという暖かい暖かい温室の中で過ごしてきた。今が、ちょうどその温室から外に出る潮時なのかな。私もビートルズ大英博物館に葬ってしまおうかな。ビートルズは、分裂してしまったのだから。

当時盛んになっていたジョージ・ハリスンジョン・レノンリンゴ・スター、クラウス・フォーアマンの新しいビートルズの噂に、10代のringoさんは、キッパリこういっています。

ポールを除いた他の3人で、ビートルズを再編成しようという動きがある。したかったら3人で勝手におやりなさい。


でも、それは最早ビートルズではありませんよ。


そう、それは10代のringoさん、ビートルズではありませんね。ぼくも、そうおもいます。