かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

イニャリトゥ監督『バベル』

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ロッコの片隅で放たれた一発の銃弾がアメリカ・日本の孤独な魂をつなぎ合わせていく。言葉が通じない、心が通じない想いはどこにも届かない。イニャリトゥ監督が映像と音楽の普遍性を言葉に優ると信じて描いた、愛と痛みに関するヒューマンドラマ!!


(「ギンレイ通信Vol.101」より)


ロッコの少年が、遠距離から試しに放った銃が、通過していたバスに乗っていたアメリカ人の女性(ケイト・ブランシェット)に当たってしまう。そこから派生する事件が描かれる。


女性は、村で手当てを受けるが、付き添う夫(ブラッド・ピット)と村民のあいだは、言葉が違い、なかなか気持ちや意図が伝わらない。


警察は、犯人を追うが、犯行に使われた銃を村に残したのは、日本人旅行者(役所広司)だった。彼は親切な村民へ感謝として、帰国する前に銃をプレゼントしたのだった。


その日本人は、妻が自殺、娘(菊地凛子)と二人、日本で暮らしている。娘は、聴覚の障害者だった。彼女の生活はどこか投げやりで、父娘の関係もぎこちない。


ロッコの事件と日本人の父娘の関連は、ただ犯行に使われたのが、彼の残していった銃だった、とそれだけ。


ストーリーの関連ではなく、言葉がうまく伝わらない、人の心が通わない、そんなシンボル的存在として菊地凛子聴覚障害、彼女の孤独な存在自体が、使われている。


退屈はしなかったけど、これが名作の仲間にはいるかどうかむずかしい。


ロッコと日本の併行的な描かれ方が成功しているとみるか、もうひとつと見るかでも、映画の評価が分かれそうな気がする。