かぶとむし日記

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ペドロ・アルモドバル監督『ボルベール(帰郷)』

ボルベール<帰郷> コレクターズ・エディション [DVD]

「今もっとも自由で独立した映画監督」と言われるペドロ・アルモドバル作品。女性のたくましさと母性を、尊敬と賞賛をこめて描いてきた彼の目線は、今回も健在だ。登場するのは、大昔に死んだはずなのにひょっこり戻ってきた母、二人の娘、孫娘、叔母、隣人の6人の女たち。セクシーでたくましい女を演じたペネロペ・クルス、監督とは19年ぶりの仕事となったベテラン、カルメン・マウラら6人の女優は、カンヌ映画祭の最優秀女優賞を全員が獲得するという快挙を成し遂げた。女が主役となれば、当然そこには笑いと涙と“秘密”がいっぱい。先の読めないユニークな筋書き、6人6様の生き様、ペネロペが歌うタンゴの名曲「ボルベール」をご堪能あれ!


(「goo映画」より)


娘(実の子ではない)をレイプしようとする父、防御からその父を殺害する娘。娘を守るため死体を隠蔽する母。


こんなショッキングな素材を映画にしたらどんな深刻な作品になるだろう、って思いますが、全然暗くありません。実にシャープで、コミカルさも兼ね備えた秀作です。


死体は放棄されますが、殺人がばれるのかどうかわからないまま、映画は終ってしまいます。監督の主眼は、殺人容疑のゆくえには興味がないのです(笑)。


監督が描きたかったのは、女性の、娘を守る母性の強さでしょうが、それをただ「母は強し」というだけでなく、同じ女性が、<亡き母を慕う少女>でもある、というふうに描いています。


たくましくて、それでどこかあぶなげな……そんなひとりの女性を演じるのがペネロペ・クルス。監督が思い描く<ある女性>を、観念ではなく、具象として、演じることができる魅力的な女優です。


ペネロペ・クルスは、美人ですが、作品によっては、醜い素顔を露出するような役もやりますし、いいですね。



ペネロペ・クルス



★左端が、ロラ・ドゥエニャス


それから、脇役のロラ・ドゥエニャスは、主張しない存在感をもったすぐれた女優です。こんな脇役女優がいると、映画は厚みをましてきますね。


この作品、男性よりも女性の共感を呼びそうです。


★「ギンレイホール」にて