かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

山本薩夫『続忍びの者』(1963年)



織田信長一向一揆撲滅作戦のなかで、石川五右衛門はマキとのあいだに生まれた子供を殺される。信長の部下に、物でも棄てるように、あっさりと火の中に投じられたのだ。


五右衛門は、再び、わが子や多くの同胞を殺戮した信長への復讐を心に誓う。


陰で操るのが忍者の極意である。五右衛門は、信長から疎んじられるようになった明智光秀山村聡)に近づく。信長の恩義に忠実な光秀も、繰り返される信長の屈辱的な仕打ちに悩んでいた。信長という男は、一度疑心を抱くと、許すことがない。


追いつめられた光秀は、五右衛門の<いま信長は、少数の供回りだけで本能寺にいます>という情報に、信長への反乱を決意する。


燃えさかる本能寺で、信長は本堂の奥へ避難するが、そこに五右衛門が待っていた。


五右衛門は、信長の手を、足を、輪切りにする。殺人鬼信長の苦しみ悶える姿を見て、五右衛門は笑う。復讐は成就したかにみえたのだが……。


頼みとする明智光秀の天下は長くなかった。明智を破った豊臣秀吉東野英治郎)の時代がくる。


信長への復讐に成功した五右衛門は、マキとともに、マキの故郷の雑賀(さいが)で、平和に暮らしていた。五右衛門が身を寄せる雑賀党は、仏門への信仰厚く、五右衛門も仏教徒として生きていた。


だが信長に代わって天下人となった秀吉は、かつて明智光秀に味方した雑賀党の砦を囲む。


網の目をかいくぐって、五右衛門は援軍を呼びに走ったが間に合わず、戻ってみると、雑賀党は全滅。妻のマキも死んでいた。


五右衛門は、再び忍者となって、秀吉への復讐を謀る。


徳川家康(永井智雄)の家臣・服部半蔵伊達三郎)から、秀吉の住む聚楽第の図面を手に入れた五右衛門は、ある夜、聚楽第へ忍び入る。


五右衛門は、秀吉の寝所近くに接近したが、鴬(うぐいす)張りの廊下の仕掛けが、半蔵の図面には記されてない。半蔵も、そして五右衛門も仕掛けがわからなかったのだ。


もう一歩のところで、暗殺は失敗。五右衛門は捕らえられる。


五右衛門は、釜茹での刑。


「忍者の知恵など、所詮その程度のものよ。一人の忍者が天下を動かす時代は終ったのだ」と家康は笑う。


★★★


珍しいことですけど、『続忍びの者』は、『忍びの者』より、おもしろいです。


『忍び者』の五右衛門の闘う相手は、百地三太夫という忍者の首領でしたが、「続」では、織田信長豊臣秀吉という強大な権力が相手になるため、話のスケールもアップし、権力者対民衆(強者対弱者)という構図もより明確になってきました。


若山富三郎織田信長は、悪役に徹してみごとですが、今回豊臣秀吉に扮した東野英治郎がまた圧巻。宗門のはかない抵抗を、不気味に笑いながら大砲を打ち込む憎らしさは、悪役でも惚れ惚れしてしまいます(笑)。


ぼくは市川雷蔵の映画を全部は見ていませんが、いままで見たなかでは、この『忍びの者』、『続忍びの者』が一番好きです。