かぶとむし日記

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杉田成道監督『最後の忠臣蔵』(上映中)


最近の優れた時代劇には、新鮮な魅力を感じる。この映画も、刀と刀の切り合いは、少ない。少なくも、それが見せ場ではない。


監督は、討入りのあと、大石蔵助の使命を受けて生きながらえた、武士のストイックな内面を、彫深く描くことに焦点をあてている。


役所広司は、往年の時代劇スターのように、目を剥いたり、りきんでセリフをしゃべったりしない。どちらかというと静かな自然体の演技なのに、非常に存在感がある。役所広司を見ているだけでも、そうとうな手ごたえがある。


その意味では、この映画で、もうひとりの魅力的な俳優、佐藤浩市を、十分に生かしきれていない。





もうひとつの見どころは、大石蔵助の隠し子、可音(かね)を演じた桜庭ななみの清楚で気品ある美しさ。観客の多くが、彼女に魅了されてしまうのではないだろうか。


18歳で、16歳の役を演じているが、演技は稚拙ではないし、過剰すぎる感情表現もない。桜庭ななみは、新人賞の有力候補ではないか、とおもう。


もちろん、すべて杉田成道監督の、演出の手腕が確かなのだろう。終わった後で、いい作品を見た充実感を味わえた。