かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

小泉堯史監督『蜩ノ記』を見る。


10月4日土曜日の11時半、家人のクルマに川越駅でひろってもらい、そのままウニクス南古谷へ。12時10分からの『蜩ノ記ひぐらしのき)』を見にいく。


『雨あがる』(2000年)、『阿弥陀堂だより』(2002年)の小泉堯史(こいずみ・たかし)監督作品だ。美しい風景が期待できて、たのしみ。




ある罪を理由に、藩の歴史を編纂したのち、10年後の切腹をいい渡された戸田秋谷(とだ・しゅうこく=役所広司)と、戸田が逃走のないよう監視役として派遣された壇野庄三郎(だんの・しょうざぶろう=岡田準一)のふたりを中心に、物語はすすんでいく。


壇野庄三郎は、戸田秋谷が藩の命令どおりに切腹するかどうか、残りの3年間の監視役として、彼の家に住みこむことになる。


やってきた日、檀野は、戸田に「命を惜しむようなことはなさいますな。見逃すわけにはまいりません」と、宣告する。


戸田には、妻と長女と長男がいた。家族は、夫として、妻として、戸田を尊敬している。近隣の百姓たちも戸田を慕っているようだ。戸田は、百姓たちとも気さくに接し、自分でも好んで田を耕したりする。


切腹の日が近づいても、穏やかな日々を暮らす戸田を見ているうち、壇野はその高潔な人柄に惹かれていく。


戸田が切腹を命じられた「罪」も、藩の都合による冤罪であることもわかる。


切腹の監視役として遣わされた壇野は、なんとか戸田の切腹をやめさせることはできないか、とおもいはじめる・・・・・



死を覚悟した高潔な武士、戸田秋谷(とだ・しゅうこく)を演じる俳優が人格の高さを漂わせなけば、この物語はリアリティが出ない。その点で、役所広司は最適な役柄。


杉田成道監督『最後の忠臣蔵』(2010年)で、討ち入りのあと、大石内蔵助が残した子を、ひそかに守り育てる武士を演じた役所広司のストイックな名演を思い出す。あの作品も、役所広司なしに、感動はありえなかった。


戸田秋谷の妻を演じるのは、名女優原田美枝子。気品のある妻を演じている。


長女の堀北真希は、清潔で凛としている。この女優の可憐さは、とってつけたようでなく自然に滲み出ていて、好きな女優さんのひとりだ。巫女さんのかっこで舞うシーンが、美しい。


そして、役所広司を監視しながら、彼の人柄に惹かれていく役を演じるのが岡田准一


さいしょに見たのが、是枝宏和監督『花よりもなほ』(2006年)で、仇討をしなければならないのに、剣の腕がからっきしダメな侍を演じていて、おかしかった。


あれから、8年。『蜩ノ記』では、剣術の達者な壇野庄三郎を演じて、迫力があるし、ちゃんまげ姿がよく似合う。


すべての役者と美しい風景が溶け合ったすてきな作品だとおもうが、、、


ひとつだけ不満をいうと、原作がそうなのだろうけど、あまりに登場人物のすべてが高潔すぎる気がしないでもない。


<予告編は、こちら>



帰りはウニクス南古谷の近くのスシローで、遅い昼飯。そのあと日帰り温泉の「はつかり温泉」へ。ひと風呂浴びたあとの生ビールがうまい。