吉田修一の原作は以前読んでいたので、映画も見たいとおもっていた。6月22日土曜日、10時15分の第1回目の上映を見るつもりで、朝早く東武練馬のアパートを出て、新宿の「武蔵野館」へいく。
午前9時半に着いたら、もうひとの列ができていた。階段を上って、列の後ろへ並ぶ。
この列の全部が『さよなら渓谷』をめあてではなくて、きょう「武蔵野館」で上映している全部の映画のお客さんがいっしょに並んでいるのだ、とわかってきて、少しホッとした。
整理番号は、「012」だから、まあ好きな席を確保できそうだ。
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入場してしばらく時間があったので、先日アマゾンから届いた雑誌『SIGHT』を読む。表紙に安倍晋三の似顔絵が描かれていて、「原発推進、憲法改正、バラマキ予算。日本が失うもの、壊れるもの」という文字が出ている。
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- メディア: 雑誌
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先日都議会選の期日前投票にいってきた。候補者を選びながらあらためておもったのは、脱原発や平和憲法を守ってほしいと願う有権者の受け皿になってくれる政党の力が圧倒的に弱いということ。
参議院選の結果次第では、憲法は骨抜きにされ、原発は再稼働が加速するのだろうか。
映画を待つあいだ、この特集をずっと読んでいた。
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『さよなら渓谷』の映画監督・大森立嗣の名前が読めなかった。ネットで検索してみたら「おおもり・たつし」と読むことがわかった。以前見た『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)も、大森立嗣監督の作品だったと、いまごろ頭を整理できた。
それから、この映画にも出演している俳優・大森南朋(おおもり・なお)は彼の弟であることも、はじめて知った。
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大森立嗣監督『さよなら渓谷』は、見応えがあった。じっくりとドラマが進行していく。静かで力強いシーンがひとつひとつ折り重なっていく。内容は暗いけれど、いい作品を見ている充実感がある。
俳優も演技が抑制されている。スジの展開は原作を読んでいるので知っていたが、退屈しない。空白というか行間というか、そこに力がある。
だから、こういう映画は、茶の間でザワザワしながら見たくない(これは、自戒!)。
美しい女優・真木よう子がほとんど全編にわたって素顔で登場。高校時代に集団レイプされた女を演じる。迫力がある。
真木よう子が出演した映画は、西川美和監督『ゆれる』(2006年)くらいしか見てない。美しい女優なので印象に残っていたが、この作品が、もっと大きな飛躍のきっかけになるような気がする。
大西信満、大森南朋の共演者もよかった。大森南朋の、なんていったらいいんだろう・・・棒立ちのような、情けないような立ち姿がキマっていた(笑)。
満足して映画館を出る。
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新宿まで来たので、線路下の細い地下道をくぐって西口の「思い出横丁」へ出る。ここなら昼間からお酒が飲める。
『SIGHT』の続きを読みながら、ホッケとクロソイの刺身で、生ビールと酎ハイ3杯を飲む。現日本国憲法と自民党の「改正案」を見比べてみると、めざすところの理念の高さがちがいすぎる。前者は、民族や国家を超えた人類の幸福を理想としているのに、後者は、自国への愛国心ばかりが強調されている。
それはともかく、いい映画のあとにうまい酒・・・満たされた気分になり、川越へ向かう。