かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

岡村幸宣著『<原爆の図>のある美術館』を読む。



埼玉県の東松山市にある「丸木美術館」へはじめていったのは二十代のころ。それからもなんどか足を運んだ。子供たちがちいさなころ、裏の都幾川で川遊びをしたこともある。


そのころ、丸木美術館は東京電力原発に反対して、自家発電で館内のあかりをまかなっていた。館内が暗くて、冬は寒かった記憶がある。福島で原発事故が起こるはるか以前から、丸木位里・俊ご夫妻は、原発の政策に反対していたのだ。原爆も原発も本質的に人類とは相容れないもの、という認識が丸木夫妻には頑としてあったのが、いまになるとよくわかる。



その丸木位里丸木俊ご夫妻の軌跡をわかりやすくたどった本が出たので読んでみる。書いたのは、岡村幸宣(おかむら・ゆきのぶ)さんで、丸木美術館の学芸員


原爆の非人間性を描いたのが<原爆の図>シリーズ。写真と文章をあわせて読んでいくと、夫妻の制作意図がみえてくる。夫妻は、原爆の悲惨さから、やがては戦争の狂気をみつめる。


戦争の被害者は、同時に加害者でもあった。


沖縄戦の図」、「集団自決」、「南京大虐殺の図」、「アウシュビッツの図」など、戦争が起こす悲劇を丸木夫妻は、次々に制作し、絵画をとおして非人道性を告発していく。


岩波ブックレットは、手頃な厚さで、かっこうの入門書。岡村幸宣さんの解説も、わかりやすくていい勉強ができた。