かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

予想以上の感動をもらったぞ!〜映画『渇水』(6月5日)。


6月5日(月)。
朝「マクドナルド」でコーヒーを飲んでから、「イオンシネマ板橋」へ、高橋正弥監督の『渇水』を見にいく。


高橋正弥監督、はじめて知る名前。




www.youtube.com



日照り続きの夏、市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、同僚の木田(磯村勇斗)とともに来る日も来る日も水道料金が滞納する家庭を訪ね、水道を停めて回っていた。


妻(尾野真千子)や子供との関係もうまくいかず渇いた日々。県内全域で給水制限が発令される中、岩切は二人きりて家に残された恵子(山崎七海)と久美子(柚穂)の幼い姉妹と出会う。父は蒸発、一人で姉妹を育てる母(門脇麦)も帰ってこない。困窮家庭にとって最後のライフラインである”水”を停めるか否か。葛藤を抱えながらも岩切は規則に従い停水を執り行うがー。




(公式サイトの「ストーリー」より)
https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/


父も母も帰ってこない。小出家の姉妹は、ふたりだけで家にとりのこされている。


姉は小学校の高学年だろうか(夏休みなのか、小学校へ通うシーンはない)。


妹は、幼稚園にいってない。姉妹は、毎日仲良く家の周辺で遊んでいる。


姉の恵子は、家庭の状況をわかっているようだ。必要なこと以外、幼い妹には伝えず、自分のなかでとどめている。


妹の久美子は、無邪気そのもの。だから明るい。でも、次第に何かが起こっていることを感じている。


雨の降らないカラカラに渇いた町。


プールも給水制限で水が抜かれている。恵子と久美子は、そこに水が満たされているように想像しながら、水のないプールで游ぐ。


岩切と木田は、水道代を長らく支払わない家を一軒一軒訪問し、納金の意思がない家は、規則によって「停水執行」をしなければならない。それが繰り返される日々の業務。


集金は難儀する。居留守を使うもの、不審者を追い払うようにドアをバタンと閉めるもの。出てきたものの、掴みかからんばかりに激しく罵倒するもの……。


原作の方に、罵倒されたあと、こういう会話が出てくる。

(木田)「あれは完全にCクラスですね」
(岩切)「そんなところかな」


Aは恭順、Bはふてくされ、Cは反抗といった具合に、停水対象者に、岩切がつけた評価だった。


毎日毎日十数件「停水対象者」の家を訪問し、こんなやりとりをしていれば、心の中が渇いてくる。


しかし、小出家の場合、両親は不在がち。


「停水」で困るのは何の罪もない小出恵子と久美子の幼い姉妹だった。


しかし、岩切は定められた規則を執行する。


「停水」を執行する前に、岩切と木田は、小出家の浴槽やあらゆる容器に水をあふれさせ、それから「停水」を執行する。彼らが姉妹にしてあげられるせいいっぱいの支援。儚いが美しい。



小出恵子を演じた山崎七海がいい。捨てられた悲しみのなかでも、妹を守ろうとする強い意思をもった少女を演じた。


妹の小出久美子を演じた柚穂(ゆずほ)は、無邪気で可愛い。姉に守られて楽しく過ごしているけれど、どこかおかしいと感じているのが切ない。


生田斗真磯村勇斗もすばらしい! 


つらくてもやらなければならない仕事と、人間として湧いてくる自然な感情ーーその狭間(はざま)に苦しむ。


映画のなかで(原作も)、何度か岩切と木田がいう。
「太陽も空気もタダなんだ。水もタダならいいのに」


門脇麦尾野真千子も、出演するシーンは多くないけれど、存在感あり。


映画全体がいいと、ひとりひとりの出演者も輝くのかもしれない。


期待以上の収穫だった。



妻に「『渇水』よかったよ。『怪物』以上かもしれない」とメールする。その夜「『渇水』見てきた。感動したよ」という返信があった。