ジョニー・キャッシュの伝記映画。まだ封切りされたばかりでしたが、時間があったので地元の映画館で見てきました。実はジョニー・キャッシュについては、彼がカントリー・シンガーの大物だ、という以上何も知りませんでした。ぼくが、ジョニー・キャッシュの名前をはじめて知ったのは、ボブ・ディランが『ナッシュビル・スカイライン』(1969年)というアルバムで、「北国の少女」をデュエットしているのを聴いたときでした。
このアルバムは、ディランが突然美しく澄んだ声に変ったので話題になりましたが、ジョニー・キャッシュはよく響く低音で、ディランと「北国の少女」をデュエットしていました。二人ともハモる気がないのか、デュエットといってもかなりバラバラで(笑)、それがいかにも大物デュオという感じがしたものでした。
ジョニー・キャッシュを演じたのは、ホアキン・フェニックス。個性的な俳優です。しかも、おどろくことに、映画のなかのキャシュの歌は、すべて彼が歌っているそうです。
彼が生涯をかけて愛するのが、ジューン・カーター(リース・ウィザースプーン)という女性シンガー。彼らは、それぞれ結婚していながら、心を通わせ、ついにあれやこれや遠回りしたあげく、再婚にこぎつけるという、つまり「ウォーク・ザ・ライン」は、トラブルを超えて、愛が成就するというラヴ・ストーリーなのです。
まだ封切りされたばかりなので、詳しい説明はやめておきますが、映画のなかには、若きエルビス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイス、ロイ・オービスンなどが登場し、歌います。歌は、吹き替えではなく、すべてそれぞれの俳優が歌っています。これは、オールデイズ・ファンがにんまりするシーンですね。
ジョニー・キャッシュは、ボブ・ディランの「It Ain't Me, Babe」を実際にカバーしているのですが、それを映画の中で、演じるホアキン・フェニックスがそっくり再現して歌っているのはたのしかったです。
ジョニー・キャッシュとボブ・ディランのデュエットによる「北国の少女」が映画のなかで再現されるかな、という淡い期待が最後までぼくのなかにはありましたが、さすがにそこまでサービスしては、映画が、B級ものまね大会になってしまうでしょうね(笑)。
それにしても、アメリカの伝記映画というのは、みんな少年時代のトラウマ(心の傷み)をかかえながら、人生と愛に苦しみ、それを乗り越えていく……その類型パターンを脱け出すことができないのでしょうか。
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