かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(上映中)

楽しみにしていた映画。オダギリ・ジョー樹木希林小林薫の共演となれば、つまらないはずがない、と。

映画がはじまって、やっぱりオダギリ・ジョーはいいな、とおもう。天性の魅力と、自然な演技が優しく流れていく。樹木希林小林薫もいいぞ。オカンの若い時代を演じる内田也哉子も違和感がない。

映画がはじまって半分くらいは、内容に惹きこまれた。優れた俳優の演技に魅了された。

しかし、段々おかしくなってくる。なんか変だ。

泣く泣く泣く……あのクールな演技のできるオダギリー・ジョーが泣いて泣いて、泣く。信じられない。

オカンが癌で死んでしまうのは、わかっている。その結末をどうするのだろう? 黒澤明は『生きる』で、後半を一気に飛ばして、主人公の死をセンチメンタルに描くことから逃れた。

この映画は……?

なんの工夫もない。延々と死までの過程を描き、息子が泣きまくる。オカンが死んでからも泣きまくる。ひとりごとをいう。位牌を東京タワーへ持参して、オカンに話しかける……。

これほど、作品中の登場人物を泣かせることに、作り手は疑問をおぼえないのかな。オダギリ・ジョーがかわいそうだよ。センチメンタルな泣かせ映画ならいい。でも、それでは俳優がもったない。

もともと、いいお母さんと孝行息子の話。ひと工夫なければ、あんまりのテーマ。それを新感覚の演出と達者な俳優陣で、感動させてくれるのでは、と期待していたけれど……?