竹中労の労作『聞書アラカン一代』について、もう少し書いておきます。
この本を読んでおもいましたけれども、アラカンというひとは、タテマエというのが、ないようです。全部本音なんですね。しゃべることだけでなく、生き方も。そんなひとは、そうそういません。アラカン、ひとから変人と呼ばれますが、白紙でものを見るから、ひとのウソに敏感です。
映画会社の資本家のウソや、先の大戦の、日本の軍隊上層部のウソなどを、アラカンは、教養から得た思想ではなく、自分の見たナマの目で、鋭く見抜いてしまいます。
煩雑な映画会社の内部抗争の話など、ここに引用してもおもしろくないので、アラカンが見た、天皇制軍隊の<滅私奉公>のウソを、アップしておきます。
●アラカンが見た日本の軍隊
アラカンは、昭和17年から20年まで、満州から中国へ、兵士慰問の巡業へ出ます。そこで陸軍上層部の接待を受ける……。
おかしな話やけど、日本で役者やってるより前線のほうがオメコと縁がおましたな。司令部のあるところ、煉瓦の塀がずっとつづいてましてな。恤兵(じゅっぺい)部の車でスッと入っていく、銃剣した兵隊が捧げ銃や。するとどんづきが何とお茶屋ダ。タタミ敷きの日本座敷や。そこへ将校やらエライさんがきて、芸者とオメコしていく。
【注】恤兵(じゅっぺい)=金銭や品物を送って、兵士を慰問すること(goo辞書より)
そして、軍隊への痛烈な批判。
はいな、軍隊平等ではおへん。えらいさん楽して、兵隊苦労ばっかりや、こら話がよっぽどちがうと思うた。教育ないさかい、むつかしい理クツはわかりまへん。せやけど戦争ゆうたら、馬鹿も利口も生命は一つでっしゃろ。鉄砲玉にも平等に当たらな、不公平とゆうものやおへんか。
ところが、司令官やらゆうお方はちゃんと安全地帯におって酒くろうてオメコして、ほてからに滅私奉公が聞いてあきれる。ちっともおのれを虚しゅうしてまへん、これをゆうたらさしさわるけど、カツドウヤのエライさんと同じことでおますわ(笑)。
というわけですが、明日、もう少しだけ「聞書アラカン一代」から抜書きしておきたいとおもいます。
【了】