かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

マイケル・ラドフォード監督『イル・ポスティーノ』(1994年)


tougyouさんの推薦。パリから亡命してきた著名な詩人と、職を探してやっと郵便配達の職を得た青年との、微妙な友情を描く。


二人の友情は、郵便配達人にとってはかけがえのないものではあっても、詩人にとっては、ナポリの小島に滞在したときの思い出のひとつにすぎない。詩人は、離島するとともに、忙しい日々のなかで、郵便配達人の記憶も、薄れていく。


時が過ぎて、詩人がその島へもどってきたとき、青年は突然の事故で、亡くなっていた。


詩人(フィリップ・ノワレ)は、思い出の海岸にひとり立つ。


この海岸に立つと、遠い記憶のなかにあった青年との思い出が、あざやかによみがえってくる。


彼を記憶のかなたへ追いやるほどの、せわしない自分の生き方へのかすかな後悔と、静かにふくらんでくる青年の死への悲しみ……詩人を襲ってくる複雑な感情を、フィリップ・ノワレが、無言の表情で演じるラスト・シーンが絶品!!


【了】