かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

フィリップ・リオレ監督「灯台守の恋」


  

■2004年 フランス映画
■監督:フィリップ・リオレ
■主演:サンドリーヌ・ボネールフィリップ・トレトン、グレゴリ・デランジュール

フランスの”世界の果て”といわれるブルターニュ地方のウエッサン島のジュマン灯台カミーユ灯台守だった父、そして母が過ごした家を売却するために帰省したが、両親の秘密が隠された一冊の本を発見する……。神秘的な映像の中に描く大人のラブ・ストーリー!!




<「ギンレイ通信 Vol.86」より>

いい映画ですからね、じっくり見てください、そういいたくなります。メインになる登場人物は、灯台守の夫婦と、この島を訪れてくる青年の3人ですが、この3人の心の動きを追う、こまやかな描写が、この映画の魅力を決定しています。



無愛想な夫と、無口だが気のきくその妻のふたりのもとへ、青年は寄宿しながら、灯台守の仕事を、見習いとしてはじめます。一緒に宿直して、灯台守の仕事を指導する相手は、その夫です。しかし、その男は、よそ者が気にいらないのか、ろくに返事もしません。





  

【写真】:静かでありながら、おさえがたい恋情を秘めた女性を好演したサンドリーヌ・ボネール




謙虚で美しい青年と、灯台守の妻のあいだに心が通いはじめます。静かに、徐々に、しかし、内面からおさえがたい熱情が吹きあげていきます。映画は、静かに二人の心の動きを、目線や小さな顔の表情の動きで描いています。ぼくにとって、映画がもっとも魅惑的に感じられる瞬間のひとつです。



最初口もきかなかった夫との友情が育っていくにつれ、その妻への恋情がおさえがたいものになっていく。祭りの夜に、青年と妻は結ばれますが、それはもう青年がこの島にはいられない、ことを意味します。



ストーリーはシンプルです。友情と横恋慕の話です。しかし、メイン俳優の感情をおさえた演技、監督のツボを押さえた演出。傑作です。