かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

今村昌平監督『にあんちゃん』(1959年)


jinkan_mizuhoさんがDVDを送ってくださったので、見ることができました。


10歳の少女安本末子が書いた日記が原作。佐賀の炭鉱の一家が味わう、極貧の生活が容赦なく描かれていきます。炭鉱の景気が下降すると、ここに住むひとたちは、次々に職を失い、働き手を失った一家は、すぐに食いつめてしまう……。


やりきれない映画なのに、陰惨な感じがしないのは、子供たちの力強さでしょう。子供たちの自然体演技が、いいですね。小学生なのに、なんとも頼もしい!


子役たちの名演を、殿山泰司北林谷栄小沢昭一の渋い脇役陣が支えています。


保健婦さんをやっている美しい女優は誰だろう、って見ていたら若き日の吉行和子でした。つらい映画のなかで、清潔な美しさをもった吉行和子演じる保健婦さんに、救われます。


現在ではなかなか実感できない、暗く貧しい日本の昭和30年代を描いています。


しかし、一家が離散するような厳しい状況のなかで、両親を失った兄弟姉妹(きょうだい)の、心は1つに結ばれています。互いを想いあい、いつか兄弟姉妹が一緒に暮らすことのできる日が来ることを、10歳の少女はひたすら願っています。


肉親同士の殺傷事件を目にすることがおおい現代、ぼくらは一体どこへ迷いこんでしまったのだろう?   


そんなことも考えてしまう作品でした。


【了】