かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬己喜男監督『娘・妻・母』を見直す。



今回は、DVDで見る。


成瀬己喜男監督の『娘・妻・母』は、1961年東宝の作品。場所は、東京の郊外(ネット情報では、代々木上原あたりを想定しているとか)。

出演:


以上のように豪華キャストの競演だけれど、女優たちの華やかな映画ではない。テーマはお金の問題が起こって、家族が離散しなければならない、という成瀬己喜男らしい作品。


同じ家族離散を扱った映画でも、小津安二郎監督『麦秋』(1951年)は、長女紀子(原節子)の結婚が要因の発展的離散で、家族それぞれへのやさしい想いが感じられる。


しかし、


成瀬己喜男監督の『娘・妻・母』は、長男(森雅之)の投資先の会社が倒産、社長(加東大介。長男の妻、高峰秀子の叔父)が逃亡したため、一家は、抵当にいれていた家を手放さなければならなくなる。


家族会議は、容赦がない。


遺産らしいものがないとわかると、兄弟姉妹(きょうだい)は辛辣な本心を露わし、「では、おかあさんを誰が見るの?」と、母のいる目前で、母を他へ押しつけあう会話が、無遠慮に交わされる。


嫁ぎ先の舅・姑と上手くいかず、実家へ帰っていた長女(原節子)は、兄弟姉妹の浅ましさを見かねて、母といっしょに暮らすことを決意する。


が、その母(三益愛子)は、再婚する長女の重荷になることを考え、ひそかに老人ホームから入所案内の書類を取り寄せている、というストーリー。


成瀬己喜男作品を見たあとはたいていそうだけれど、重い余韻が残る。



余談・・・『秋立ちぬ』、『驟雨』、『稲妻』などの成瀬作品を見直したいけれど、ネットで契約しているTSUTAYAレンタルには見当たらない。これだけ巨匠の作品でも、手軽に見られないのが現状。とても残念だ。