海辺の町の古い民家に集った、世代も生き方も全く異なる5人の女性たちの出会いと別れに焦点を当て、それぞれの心の変化を丹念に描き出す。キャストには香川京子、樹木希林、浅田美代子、宮地真緒らベテランから若手までが勢ぞろいし、存在感あふれる演技を披露する。物語のもう1つの主役ともいえる、舞台となった古民家の重厚なたたずまいが味わい深い
(「Yahoo!映画」より)
保江(香川京子)は、70代だろうか。戦中派だ。健忘症というほどではないが、時々記憶があやしくなることがある。戦争の末期、この古い民家に過ごしていたことがある。
保江の孫の明美(宮地真緒)は、映画のなかで、「23歳」と年齢を自分の口から明らかにしている。元気な今の女性だが、恋人の子供をお腹のなかに宿している。そして、それをまだ恋人に話していない。
この民家の持ち主は、光子(浅田美代子)。40代くらいだろうか。夫が失踪し、いま小学生の女の子(坂野真理)とふたりで、民家に住んでいるが、まもなく、ここを壊して立て直そうと考えている。新しい恋人がいるようでもあるが、まだ失踪した夫に未練を多く残している。小学生の子は、母の心を気づかいながら、父の帰るときを、待っている。
民家の以前の持ち主、美土里(樹木希林)は、50代だろうか。何か美容のクスリのようなものをセールスしているようだが、商品に問題があり、怒った買主から身を隠しているようでもある。
こんな世代の違う5人の女性が、古い民家を舞台に、数日間、時を共に過ごす。そして、楽しく語らいながらも、少しずつ、5人の抱えている哀しみが、明らかになってくる。
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香川京子の最近の作品ということで、レンタルしてみましたが、静かないい映画でした。
香川京子は、ここでは孫から「おばあちゃん」と呼ばれています。若いときの可憐な香川京子を見慣れているぼくには、香川京子のおばあちゃんは、やっぱりどこか不思議なものを見ているような違和感をぬぐえませんが、年齢を経ても、着物を着た香川京子は、やはり気品があり、可憐な若い時代の面影をとどめています。
樹木希林の怪演は、この静かな作品を壊しかねないギリギリ手前まで迫り、しかし損なうことなく、みごとに笑わせてくれました。リアリズムとデフォルメがうまくまじりあって、ずうずうしいようで哀しい中年の女性を、すばらしく造形しているとおもいました。