1960年代後半、全曲美しく澄んだ声で歌った『ナッシュビル・スカイライン』や、玉石混合のふしぎな作品集『セルフ・ポートレイト』を発表してファンを煙に巻いていたボブ・ディランが、1970年代にはいって、再び音楽シーンのトップに戻ってくる。
- 『新しい夜明け』(1970年)
- 『プラネット・ウェイヴズ』(1974年)
- 『血の轍』(1975年)
そしてボブ・ディランを1970年代、音楽シーンの頂点に立たした、『欲望』(1976年)の発表。
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勢いにのったボブ・ディランは、1975〜1976年、全米ツアーを開始した。
ツアーは、サーカスの巡業をイメージされたものになる。
ビート詩人アレン・ギンズバークの詩の朗読、ジョン・バエズ、ロジャー・マッギン(バーズ)、リック・ダンゴ(ザ・バンド)、パティ・スミスなど思いがけないゲストが登場し、内容はハプニング性が強かった。
が、何よりも、このツアーでは、ライヴ・ミュージシャンとして、もっとも優れたボブ・ディランのパフォーマンスを見ることができる。
ボブ・ディランは、顔に異様な化粧をほどこし、新しいアルバムや過去のヒット曲を、新鮮なアレンジで演奏した。
「ローリング・サンダー・レビュー」のライヴ音源は、一部の公表をのぞき、おどろくことに26年後の2002年になって、『ローリング・サンダー・レヴュー(ブートレッグ・シリーズ第5集)』として、やっと発売される。
長いこと、一部だけしか聴くことのできなかったツアーの全貌をはじめて聴き、ぼくは感動した。
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いままで人気がいまひとつ盛り上がらなかった日本でも、このころ(1975年頃)、関西を中心に、ボブ・ディランの人気に火がついた。
『欲望』は、ディランのなかでも、メロディアスな曲が多く、それが日本人の好みにも適合したのかもしれない。収録された「ハリケーン」や「コーヒー、もう一杯」がヒットした。
そして1978年の初来日で、日本でもディラン人気はピークに達するけれども、ボブ・ディランの1970年代のライヴとしては、『武道館』よりも、やはり「ローリング・サンダー・レビュー」が凄く、発散するオーラに圧倒される!
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●美しいメロディで日本でもヒットした「コーヒー、もう一杯」。
●ロック色強くアレンジされた「悲しみは果てしなく」。
●ニュー・アルバム『欲望』から「ドゥランゴのロマンス」。