かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ラルフ・ネルソン監督『ソルジャー・ブルー』(1970年)

DVD名画劇場 ソルジャー・ブルー<HDリマスター版>

DVD名画劇場 ソルジャー・ブルー


20代のころはじめて見て、強い衝撃を受けました。


たとえば、、、


駅馬車を襲うインディアン、それを助けにやってきた騎兵隊・・・バッタバッタと悪いインディアンをやっつけて駅馬車を救う、騎兵隊の大活躍。


これは西部劇のひとつの定番でしたが、、、


そういうこれまで見てきたテレビや映画の西部劇が、この映画『ソルジャー・ブルー』で、くつがえされます。


それからしばらくは、まともにジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の西部劇を見る気になれなくなりました。


あまりに衝撃が強かったし、後半の殺戮シーンがつらいので、それからずっと見るのを避けてきた映画ですが、あのころ受けた衝撃をもう一度確認したくて、40年ぶりに見てみましたが、、、



シャイアン族に襲われ、騎兵隊は全滅。同行していた女性クレスタ(キャンディス・バーゲン)と、若い騎兵隊員ホーナス(ピーター・ストラウス)のふたりだけが、生き残る。


ふたりは、荒野のなかを旅しているうちに次第に惹かれあっていく・・・という、前半は過去の西部劇の定石を踏襲しているようでもあって、まあまあ穏やか。


しかし、父を殺されインディアンを憎む若い騎兵隊員ホーナスと、一時シャイアン族と暮らしていて、騎兵隊の残虐さを知る女性クレスタとでは、ことごとく見方が食いちがう。


ホーナスは、騎兵隊の正義を信じて入隊した。そして新たに、全滅された仲間への復讐を心に秘める。


そのホーナスの忠誠心をあざ笑うような殺戮シーンが、終盤に展開する・・・。


騎兵隊たちはインディアンの部落を襲い、無抵抗な子供を嬲り殺し、女性を輪姦したうえ、奇声を発しながら逃げ惑う女の首を刎ねていく*1



どうしても後半の殺戮シーンが強烈で、そこばかりが記憶を占めてしまいますが、前半の価値観のちがう男女が協力して荒野を脱するまでのストーリーもおもしろいし、インディアンと暮らした経験を持つ、男勝りなクレスタを演じるキャンディス・バーゲンが野性味のある女性を演じて、これも魅力的です。


キャンディス・バーゲンは、当時の映画雑誌では表紙やグラビアを飾るような人気女優だったとおもいますが、よくこのような刺激の強い映画への出演を決断したものだなあ、とそのへんの裏事情を何も知らないので、この女優自身にも興味を感じました。


ニュー・シネマが話題になっても、あまり『ソルジャー・ブルー』について語るひとは少ないですね。しかし、この作品は、キワモノ映画でもなんでもなくて、強いメッセージ性をもった秀作ではないか、と久しぶりに見て、おもいました。

*1:このシーンに、わたしは、「南京虐殺」などの、戦争中の日本人の残虐行為がダブり、よけいやりきれない気持ちになりました。