- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2008/08/27
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寅さんと会いたくなり、ひさしぶりに見る。もうこの作品を何回見たかわからない。20回は見てないかもしれないが、10回以上は見ているだろう。
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最初は、21歳か22歳で、熊谷の映画館で上映技師のアルバイトをしていたときだ。フィルムを二つの映写機にとりつけて、1本を回し、それが終わるころになると、もう1本の映写機が動き出す。
それは自動で切り換わる仕掛けになっていたが、時々作動しないときがあるので、見張っていてうまく切り換わらないときは、手動で切り換えなければならない。
そんなことをアルバイトでやっていた。映画が好きでやっていたが、時給はものすごく安かった。
2本立ての映画館で、1週間ごとに上映作品が変わる。
だから、最初の1回目は映画を見ながらフィルムを回しているが、2回目からは本を読んでいて、フィルムの切り換えどきになると、そちらへ注意を向ける。たまに本に夢中になっていて、自動切換が作動しないと、スクリーンになにも映ってなくて、明かりだけがチカチカしている、ことになってしまう。フィルムが切れて、観客にアナウンスで待ってもらい、一生懸命ノリでフィルムをつなぐ・・・そんなこともあった。
わたしも、そういう失敗をやったが、むかしは客席から映画を見ていても、なんどかそういう場面に立ちあったことがある。いまはそういうことが、まずない。映写機が進歩したのだろうか。
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そんなときに『柴又慕情』が公開された。わたしは、それまで寅さんの映画にそれほど興味をもっていなかった。1本も見ていなかったかもしれない。
その日、自分でフィルムを回しながらなんども笑った。2回目も見て、やっぱり笑った。『柴又慕情』は、わたしが寅さんのファンになるキッカケになった。
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北陸の茶店で、旅行中の女性三人と出会うシーンが好きだ。侠客をきどる寅さんが、柴又が故郷だが、20年、30年も帰っていない。親戚がいたが、もう死に絶えただろう・・・というシーンはなんど見ても、笑ってしまう。
それから、吉永小百合演じる歌子が、はじめて<とらや>を訪ねてくるシーンも好きだ。
<とらや>には誰もいなくて寅さんだけがいる。そこへ歌子がくる。寅さんは、思いがけない来訪者にあがりまくり、会話も上の空で、トンチンカンなことをいう。
好きな女性とふたりっきりでいる幸福感よりも、緊張感がたえがたく、途中で妹の<さくら>がやってきたときは、救世主が登場したようにホッとする。その感覚が、よくわかった。
このころ吉永小百合は何歳くらいだったのだろうか。とてもきれいだ。
『キューポラのある街』のころわたしは中学生で、吉永小百合主演の青春映画を片っ端から見ていたが、20歳になったころは、どんな映画に出ているのかも、知らなかった。
ひさしぶりに見る吉永小百合は、すっかり大人になっていた。青春映画のころは、きれいというより可愛いという表現のほうがぴったりする少女だったが、『柴又慕情』の吉永小百合は、美しい大人の女性になっていた。
寅さんといっしょになって、吉永小百合の<歌子さん>に見惚れた記憶がある。