かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成島出監督『草原の椅子』(公開中)


東日本大震災以後の東京。カメラメーカーに務める遠間憲太郎(佐藤浩市)は、取引先である『カメラのトガシ』社長の富樫(西村雅彦)と親しくなり、心を通わせるようになっていく。互いに本音を語り合い、これからの人生をどう歩んでいくのかを模索するうち、何もない草原に椅子がぽつんと置かれた写真に出会う。その写真を見た2人は、心に強い衝撃が走るのを感じる。2人は、遠間が思いを寄せる器屋のオーナー貴志子(吉瀬美智子)と、母親に虐待され心に傷を負った4歳の少年・圭輔を連れ、世界最後の桃源郷と呼ばれるパキスタンフンザへ旅立つ……。


(「goo映画」より)


佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子小池栄子という出演者の組み合わせに魅かれた。


妻に逃げられて、大学生の娘と暮らす50歳の男が、佐藤浩市。シリアスな演技に加えて、『マジックアワー』以来のコミカルな味わいも見え隠れして、ますます俳優としての魅力を深めている。大好きな男優のひとりだ。


「カメラのトガシ」を経営する社長(西村雅彦)との居酒屋でのやりとりが楽しい。酒を飲みながら、自分のみっともなさもさらけだし、それだけ親しくなっていく。立飲み屋、居酒屋などが立ち並ぶ夜の繁華街は、どこの街で撮影されたのだろうか。


佐藤浩市が、ほのかな想いを寄せているのが着物姿の似合う貴志子(吉瀬美智子)。吉瀬美智子が、美しい。奥さんに逃げられて独身になった佐藤浩市が魅かれてしまうのはごく自然だ、とおもってしまう。


この3人が、母親から虐待されて自閉症ぎみの子供を心配するところから、交流を深めていく。


3人は、それぞれに心に傷をかかえている。その傷を癒そうとパキスタンフンザへいく。


後半は、パキスタンフンザのロケが重要な役割を担う。


その風景、その住民(とくに100歳を超える長老)が、3人(子供を含めると4人)の傷を癒してくれて、新たに生きていく道筋を与えてくれる・・・という結びだが、わたしには、パキスタンフンザの風景や老人との会話が、十分にその役割を果たしているようには感じられなかった。何かものたりない。だから、最後はとってつけたような印象が拭えない。


それから、出番は少ないが、幼児を虐待した母を演じるのが小池栄子。感情が(表情も)急激に変化する異様な女性を小池栄子が鋭く演じて、強烈な印象が残った。