かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画『花筐』を見る(12月30日、旧年中の積み残し)

年明けて、1月4日より日記再開。まずは、去年書きそびれてしまった映画から。


12月30日、土曜日。川越へ帰る前に、有楽町スバル座で、大林宣彦監督の『花筐 HANAGATAMI』を見る。


少年は魂に火をつけ、少女は血に溺れる。


1941年の春、アムステルダムに住む両親の元を離れ、佐賀県唐津に暮らす叔母(常盤貴子)の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦(窪塚俊介)の新学期は、アポロ神のように雄々しい鵜飼(満島真之介)、虚無僧のような吉良(長塚圭史)、お調子者の阿蘇(柄本時生)ら学友を得て“勇気を試す冒険”に興じる日々。


肺病を患う従妹の美那(矢作穂香)に恋心を抱きながらも、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)と“不良”なる青春を謳歌している。しかし、我が「生」を自分の意志で生きようとする彼らの純粋で自由な荒ぶる青春のときは儚く、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。「殺されないぞ、戦争なんかに!」・・・俊彦はひとり、仲間たちの間を浮き草のように漂いながら、自らの魂に火をつけようとするが……。


(『花筐』のオフィシャル・サイトから)
http://hanagatami-movie.jp


華やかなで飛躍する映像のたのしみ。顔を白く塗った兵士たちが、隊列ををなして歩くシーンは、寺山修司監督の『田園に死す』(1974年)を連想させるし、華やかで飛躍しながら展開する映像は、鈴木清順監督『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)を思い出させてくれる。どちらも、大好きな映画。


しかし、『花筐』は上記の2作品ほどたのしめなかった。それは一にも二にも、演出の過剰さ。


映像展開の読めないおもしろさをたのしめた『田園に死す』や『ツィゴイネルワイゼン』は、そういう意味でいえば、クールさが感じられた。映像は艶やかでも、登場人物が激してセリフを語ったり、大きな身振りをする、ということはなかった。この作品を見ていると、その差が、とても大きく感じられる。


大林宣彦監督は、戦争は若者の自由を崩壊してしまう、というようなテーマを描いていて、その主旨にはもちろん共感するけれども、急に生な戦争反対のテーマがセリフで露出してくると、他の飛躍する映像のなかで浮いてしまうようにおもわれるのだが・・・。


大林宣彦監督の『花筐』が、2017年最後に見た映画になった。


『花筐』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=EghblZ4U5fY



帰りはどこにも寄らず、有楽町線で川越へ帰る。