池袋の新文芸座で、映画を2本見てきました。ドイツ人監督が、正面からアドルフ・ヒトラーを描いた「ヒトラー〜最期の12日間〜」と、ラッセル・クロウ主演の「シンデレラマン」です。
オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
- 2004年、ドイツ映画。
- 出演:ブルーノ・ガンツ/アレクサンドラ・マリア・ララ/コリンナ・ハルフォーフ
サイトでの解説は、このようになっています。
秘書ユンゲが目撃した、ヒトラーの最期の日々、ナチスの崩壊を描く本作。監督はデビュー作『es』で高い評価を得たオリヴァー・ヒルシュビーゲルだ。最大のタブーに触れた衝撃作は、ドイツアカデミー賞で3部門を受賞。興味深いのは、その中に観客賞受賞が含まれていることである。ドイツ人の手によって、ドイツ語でヒトラーの姿が描かれたことには大きな意義がある。悲劇を繰り返さないためにも、タブーを葬り去るだけではいられない時に来ているのだろう。ヒトラーの著作「わが闘争」は、今なお、ドイツでは発禁本となっている。そのドイツで、ヒトラーの最期を真正面から見据えた作品。
ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)は、ベルリンの地下深い要塞に潜伏していますが、すでにドイツ軍の命令系統は崩壊し、軍の戦力は壊滅状態になっていました。
秘書の募集で雇われた女性ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララ)は、追い詰められ、憔悴したヒトラーの、最期の12日間を目撃します。
映画は、このユンゲの視点を通して描かれていきます。
周囲のひとたちに優しいヒトラーの一面と、思うようにならない戦況に苛立ち、部下の将軍たちを激しく怒鳴りまくる、恐ろしい彼の一面が、ユンゲのなかでは、なかなか1つに結晶しません。彼女にとって、ヒトラーは理解しにくい雇い主でした。
しかし、ユンゲは、ヒトラーと、彼の愛人(死の間際に結婚する)エヴァ・ブラウンへ、次第に同情をよせていきます。
至近距離から見るヒトラーは、何百万人のユダヤ人を虐殺した恐ろしい指導者ではなく、敗戦の色濃い、年老いた、孤独なドイツの最高指揮官でしかありません。
逃げ延びたユンゲが、ヒトラーの犯した恐ろしい犯罪の全貌を知るのは、戦後になってからでした。
ドラマらしい起伏をつくらず、抑制されたリアリズムで、ヒトラーの終焉を描いています。ブルーノ・ガンツは、恐ろしい独裁者ではなく、憔悴した敗軍の将としてのヒトラーをきめ細かく演じています。
ロン・ハワード監督「シンデレラマン」
○主演:ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー
映画のサイトでは、こんな風に解説しています。
愛する妻メイと3人の子供に囲まれ幸せに暮らすジムは、ボクサーとしても将来を嘱望されていた。だが1929年、彼は右手を故障してしまったことをきっかけに勝利から見放されていく。さらに時代は恐慌を迎え、やがてジムもライセンス剥奪で引退を余儀なくされ、失業者の一人として肉体労働をして家計を支えていた。そんなある日、元マネージャーのジョーから、一夜限りの復帰試合の話が舞い込んでくる。相手は勝ち目のない新進ボクサー。それでもジムは、その報酬で家族を救えるという一心で試合を引き受けるのだった…。
144分という長さですが、一気に見ました。ラッセル・クロウの白熱した演技に一瞬一瞬ハラハラ……ボクシングの対戦シーンでは、本当に、手に汗を握りました(笑)。
これがフィクションですと、復帰した、峠を過ぎたボクサーが現役の若手を次々打ちのめしてチャンピオンに昇りつめるという話は、できすぎているような気がしますが、実話だということですからね、文句はいえません(笑)。
実際に、憎らしいほど強そうな対戦相手に、ラッセル・クロウ演じるジム・ブラドックのパンチが炸裂すると、喝采をおくりたくなるほど、痛快になります。久しぶりに、おもしろいハリウッド映画を見たという気がしました。
共演は、妻役のレネー・ゼルウィガー。改めてうまい女優だとおもいました。「コールド・マウンテン」で助演女優賞をもらいましたが、今回の映画の方がよかったのでは?
ボクサーという危険な職業……夫の身体を案じる、妻の不安を表情豊かに、しかしやりすぎにならずに、的確に演じていました。