読みはじめたら引込まれてしまった。よくある青春小説でありながら今まで読んだものとはっきりちがう。
愛知から大学のために東京へ出てきた青年が、1年で大学を中退し20代をコピーライターやプランナーとして働きながら生きていく姿を描いている。
久雄は青春小説によく登場するような、生きるのに不器用な男ではない。機敏に仕事をこなし、小さな会社ですぐに頭角を現して、働くことに迷いもないようだ。あとからやってくる新人を「仕事のできるやつって少ない」って平気でいってのける。これまでのような青春小説で好まれるタイプではないのがおもしろい。でも一生懸命に生きていく久雄にぼくは共感してしまう。きっと奥田英朗の描き方が読者のぼくより一段も二段も上手なのだろうな。
ひとつの短編ごとに話は独立している。まんべんなく主人公の10年間を描く、というような構成ではなく、ある年のある時期だけが精細に一篇として描かれる。久雄は学生だったかとおもうと、次の短編では、小さな広告代理店の新人社員であったりする。次には独立して成功し、20代でありながら年収1千万円以上の収益をあげている。成功した1青年の東京奮闘記とも読める。
とはいえ、どこか甘苦い青春の香りが漂う。これも青春小説であることには変わりがない【END】
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