かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

藤沢周平『海鳴り上・下』


海鳴り (上) (文春文庫)

海鳴り (上) (文春文庫)


NHKの「ラジオ深夜便」の朗読がよくて、しかし毎回は聞くことができないので、本を読んでみた。



この小説のなかで、主人公の紙問屋・新兵衛は、3つの苦しみをかかえている。


1つは、美しい人妻おこうとの、世を忍ぶ恋の苦しみ。人妻との恋愛が、社会的な破滅につながる時代である。


1つは、紙問屋仲間の駆け引き、商売で窮地に立たされる苦しみ。


1つは、妻との冷えた関係、道楽息子の放蕩・・・家庭不和の苦しみ。


この3つの要素がからまりながら、新兵衛とおこうの恋愛を中心に物語りは進んでいく。


恋愛だけなら、話が甘くなる。商売の話ばかりでは硬すぎる。家庭の不和だけでも味気ない。


3つの要素が絶妙に相乗効果を出して、物語を盛り上げていく。新兵衛とおこうの恋愛は、どうなっていくのか?


小説のおもしろさを堪能しながら、読みきった。