かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人監督『生きたい』(1999年)


生きたい [DVD]

生きたい [DVD]


レンタルDVDで、新藤兼人監督の『生きたい』を見る。


何年か前、『石内尋常高等小学校 花は散れども』(2008年)をみて、演出の過剰さがいやになり、それからしばらく新藤兼人作品から遠ざかってしまった。


しかし、ゴールデンウィーク、何か映画をみようとおもってレンタル店の棚をみていたら、新藤兼人のコーナーが目にはいったので、レンタルしてみた。



『生きたい』は、1999年の作品。ネットで前後につくられた新藤監督作品を検索してみると、

  • 1988年『さくら隊散る』
  • 1992年『ボク東綺譚』
  • 1995年『午後の遺言状
  • 1999年『生きたい』
  • 2000年『三文役者』
  • 2003年『ふくろう』


と、どれも見ごたえのある映画が続いている。


1912年生まれの新藤監督は、『さくら隊散る』を製作した1988年に76歳で、2003年『ふくろう』を発表したのが91歳。


上記リストの作品は、テーマも感触もまちまちで、にているものがない。制作力の旺盛さは、驚異的だ。



『生きたい』は、排泄の失敗を繰り返す老人(三國連太郎)と、老人と同居しているうつ病の娘(大竹しのぶ)を中心に展開する作品で、老人問題というシリアスなテーマを描いていながら、三國連太郎大竹しのぶの名演もあって、重厚さと軽妙さをあわせもった作品に仕上がっている。


現代の時間の流れと、姨捨(おばすて)の民話が同時に描かれていく。


問いかけるのは、いまの老人施設は、用済みの老人を捨てた姨捨山の民話と同じなのか、どうか。



『生きたい』の好演で、新藤兼人監督は、大竹しのぶを気にいったのか、2003年の『ふくろう』でも、再度主演に起用した。


ここでも大竹しのぶのユニークな演技で、『ふくろう』は、連続殺人をブラック・ユーモア感覚で描いて、ふしぎな魅力をもった作品になっている。