- 作者: 中山康樹
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2012/07/04
- メディア: 新書
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ビートルズの上陸は、日本における洋楽文化の始まりだった。我々は競うように洋楽を聴き、ラジオ音楽番組にリクエストのハガキを書いた。だがいまや若者の洋楽離れは顕著であり、現代日本からその影は消えつつある。
日本洋楽史の最も輝かしかった高度経済成長時代=60年代から現代まで、数々の社会現象とともに「ビートルズと洋楽ポップス」を俯瞰、その意味を問う。
(amazonの商品説明より)
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1964年にビートルズと出会い、彼らに夢中になり、それから洋楽を聴くようになったわたしには、この本のなかで書かれる時代が、ぴったりと重なる。懐かしい気分で、一頁一頁をめくった。
ラジオでビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」を聴いたときの衝撃は、いま、なかなか若い世代に伝えにくい。
60年代は、ビートルズとともに生活していた。ビートルズのニュー・シングル、ニュー・アルバムに初めて針を落とすときのワクワク感は、ほかになかった。
ビートルズの主演映画『ビートルズがやってくるヤア!ヤア!ヤア!』で、はじめて動くビートルズを見たときの興奮は、強烈すぎた。
1966年のビートルズ来日を体験し、1967年には、テレビにかじりついて世界同時中継で「愛こそすべて」を歌い演奏するビートルズを目撃する。
わたしにとって、ビートルズとともにあった60年代といってもいい。
GS(グループ・サウンズ)がビートルズやベンチャーズの影響を受けながら台頭し、まるで異質な歌謡曲に変質していく姿もまのあたりに見た。ライブハウスで、ストーンズやビートルズを演奏する彼らが、メジャー・デビューすると同時にリズム歌謡を歌うバンドになっていくのに、心底がっかりした。わたしの邦楽離れは、ここから決定的になった。
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本書の内容は、以前読んだ恩蔵茂さんの『ビートルズの日本盤よ、永遠に!』によくにている。あとがきで中山康樹さんは、恩蔵さんの書を参考にした、とことわっているので、それでいいのかもしれないが、すこし参考にしすぎているような気がしないでもない(笑)。
この本を楽しんだ方は、さらに60年代にテーマをしぼって洋楽の受容の歴史について書かれた恩蔵茂さんの本をおすすめしたい。
しかし、日本人が1990年代、2000年代とだんだん洋楽を聴かなくなっていく経過は、恩蔵茂さんの本にはない。本書の重要なテーマになっている。
邦楽が熟成し、質が高まり、もはや「歌詞の意味のわからない」洋楽を聴く必要がなくなった・・・という説明もなっとくして読んだ。
洋楽の市場が縮小した、のはわかる。
ただ、エルビス・プレスリーが、ビートルズが、レッド・ツェッペリンが、日本の音楽市場から消えていく日がくるとは信じがたい。
それに、著書は洋楽のファン離れを説明しても、肝心の「若い世代のビートルズ離れ」の実態には、ほとんど触れていないので、肩透かしをくったような気がした。