かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

小泉吉宏作『戦争で死んだ兵士のこと』


戦争で死んだ兵士のこと

戦争で死んだ兵士のこと


作者の名前「吉宏(よしひろ」の「吉」は、下の棒が長いのが正しい。



とてもシンプルな絵柄で描かれれた絵本です。


森の中の湖のほとりで、ひとりの兵士が死んでいる。


頁をめくっていくと、


「1時間前、兵士は生きていて闘っていた」


まためくると、


「2時間前、兵士はひとり道を迷っていた」


「4時間前は、戦火に巻きこまれた子どもを助けていた」


「8時間前、戦友といっしょに基地で朝食を食べていた」


と、、、


亡くなった兵士の時間がどんどん逆流していく。


兵士は、3日前に召集されていた。5日前には、友だちとヨットで遊ぶ約束をしていて、7日前には、恋人を両親に紹介している。


そして、


「24年前のきょう、この世に生をうけた。両親が結婚して9年目にできたひとり息子だった」


その兵士はいま、森のなかの湖のほとりで死んでいる。



ラジオの「セッション22」(TBS)で、荻上チキさんが紹介していた絵本。新刊では在庫がないようなので、Amazonの中古本で購入。ひとりの死んだ兵士の人生をさかぼるという発想の新鮮さにおどろきながら、読んでしみじみとした気持ちになった。