かぶとむし日記

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フォン・シャオガン監督『唐山大地震』を見る(3月19日)

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3月19日の朝、古いクルマ(マークX)を池袋のトヨペットに届ける。明日新しいクルマ(プリウス)を引き取りにいく予定。



時間を見ると午前10時。11時の上映に間に合うので、フォン・シャオガン監督『唐山大地震(とうざんだいじしん)』を見るため、東銀座の「東劇」へ向かう。終わってから雨が降っていなければ、ひさしぶりに築地周辺を散歩してもいい。予報は、午後も、雨時々曇り、だけれど。


午前11時少し前に「東劇」へ着く。




映画『唐山大地震-想い続けた32年-』予告編



20世紀最大の震災といわれる1976年の唐山大地震を題材に、「女帝 エンペラー」のフォン・シャオガン監督が描いたヒューマンドラマ。


1976年7月28日、中国河北省の唐山市マグニチュード7.8の直下型地震が発生。崩壊した家の下敷きになった子ども2人のうち1人しか救えないという絶望的な状況に陥った母親は、苦悶の末に息子を選ぶ。そしてその声は、ガレキの下の娘の耳にも届いていた。奇跡的に命を取り留めた娘は、養父母のもとで成長するが……。


日本では当初2011年3月26日に公開される予定でプロモーションも進められていたが、直前の3月11日に東日本大震災が発生。劇中に大地震の再現シーンなどが含まれることから、配給の松竹は公開を延期。4年後となる15年にあらためて公開を決めた。


「映画.com」の解説から)
http://eiga.com/movie/55853/


危機を予感した大量のトンボが群れをなして飛んでいく不穏な映像からはじまる。そして、街を全壊させる大地震が襲う。崩れる建物に押しつぶされ、瓦礫のあいだに閉じ込められる人々・・・生々しい映像が続く。東日本大震災が発生した直後の公開を延期したというのは、なっとくできる。


同じ瓦礫の下に、双子の姉と弟が閉じ込められている。


「二人を助けて」と叫ぶ母に、男たちは、どちらかしか救えない、という。片方の瓦礫を持ち上げれば、一方へ瓦礫がのしかかる。早くしなければ、ふたりとも死んでしまう。ためらう時間はない。


母は、発狂しそうな苦しみのなかで「弟を」と叫ぶ。母は、弟を選んだ。姉はそれを聞きながら、瓦礫の下で意識を失う。


ここを見て、むかし見たアラン・J・パクラ監督、メリル・ストリープ主演の傑作『ソフィーの選択』(1982年)を連想。


ポーランド人・ソフィー(メリル・ストリープ)は、女の子と男の子を連れて、アウシュビッツ駅の列に並んでいる。


ナチスは、強制収容所へ送るものと、ガス室へ直行させるものを選別していた。


ソフィーのところへくると、「どちらか選べ」という。ソフィーがためらっていると「選ばなければ、ふたりともガス室だ」という。ソフィーは、「娘を連れていって!」と叫ぶ。


この衝撃のシーンが記憶によみがえる。


『唐山大地震』では、瓦礫の下で圧死したとおもわれていた姉は、生きている。そして、養父・養母に育てられて成長していく。しかし、故郷の唐山へは、母のもとへは帰らない。


それから32年後。2008年5月12日に、四川大地震が起こる。


ボランティアで現地へ向かった娘は、そこで、子供を瓦礫に閉じ込められて泣き叫ぶ母親の姿を見る。娘が、かつての自分の母の苦しみに想いをはせる感動的シーンのひとつだ。


娘の心に変化が起こってくる。



家族を想うことの強さ、それを失うことの悲しみの深さが、ストレートな強さで描かれる。国がちがっても変わらない、普遍のテーマ。


なんどか涙が出た。近くに観客がいなくてよかった。ハンカチを出して、遠慮なく涙を拭う。



東劇を出ると、細かな雨が降っていた。散歩する気分にはなれない。日比谷線で上野へ出て、立ち呑み「たきおか」へ寄る。



https://www.youtube.com/watch?v=FzdugDkquKg

  • 「唐山大地震」予告編。