かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画『サウルの息子』を見て、ダイアナ・クラールのコンサートへ(2月24日)


14時30分から、「ヒューマントラスト有楽町」でネメシュ・ラースロー監督『サウルの息子』を見る。製作国は、ハンガリー


アウスビッシュ収容所の所内で働く主人公サウルが、なんの説明もなく、落ち着かない手持ちカメラで映されていく。サウルの仕事は、収容所へ移送されたユダヤ人たちをガス室へ送り込み、その後始末をすること。サウルは、ゾンダーコマンドとよばれる特殊部隊のひとりで、死体処理で働いた数ヶ月後には、自分たちも処刑される。


所内は、あわただしく、「働け! 働け!」というドイツ兵の怒号やガス室へ送り込まれる全裸にされた囚人たちの悲鳴や泣き声などに包まれている。映画的なセリフは少なく、この怒号のなかでカメラは主人公サウルの姿を追っていく。何が起こっているのか説明がない。


サウルは、所内に死にきれていない子ども(彼の息子というが、本当かどうかは不明のまま)を発見するが、すぐにドイツ兵に口をふさがれ、殺されてしまう。無残な子どもの死を目撃したサウスは、なんとか牧師に祈祷してもらい子どもを手厚く葬ろうとするが、大量の囚人が送りこまれ処刑されていくなかで、牧師ひとりさえ探すのに手間どる。あとは子どもを埋葬しようとするサウルの執念をカメラが執拗に追いかける。セリフは極度に少ない。


葬儀という作法にそれほどの重要を感じない自分には、このサウルの執念が切実に迫ってこない。自らの生死もあやうく、周囲で山のように死体が積み上げられ、次々処刑されていくなかで死んだ子供の遺体をかつぎ「正式な埋葬」をしようとするサウルの異様な行動に、共感できなかった。


サウルの息子』公式サイト↓
http://www.finefilms.co.jp/saul/



有楽町線で、有楽町から永田町で半蔵門線に乗換え、三軒茶屋へ。ダイアナ・クラールの公演は、18時30分開場、19時開演なので、一度会場になっている人見記念講堂の場所を確認してから、もどって、三軒茶屋の立ち飲み「たちのみや」へはいる。酎ハイやハイボールなど飲みながら、恩蔵茂著『ビートルズの日本盤よ、永遠に!』を読む。これで読むのは3度目だが、おもしろい。


ダイアナ・クラールのコンサートを見るのは、はじめて。どんな曲をどんなふうにライブで演奏するのかたのしみ。CDでは、『ライブ・イン・パリ』を聴いているが、それから時間も経っているので選曲も変化しているだろうし、音だけなので、演奏の様子もわからない。


ダイアナ・クラールは予想どおり綺麗だった。わたしの席からは、ダイアナの顔は見えるが(双眼鏡を目にあてるとアップで見ることができた)、ピアノで遮られて首から下はまったく見ることができない。まさに顔だけのダイアナを見ている感じ。


いままで見てきたのは、ロックのコンサートばかりで、ジャズははじめて。静かな盛り上がりで、ちょっと面食らう。途中トイレにいくのも、気がひけた。ただ音楽はいいし、アルバムは何枚か聴いているので、退屈はしない。ダイアナ・クラールの歌うときの恍惚とした表情が艶かしい。1964年生まれの51歳というから、年齢を経ても美しいままの人もいるんだなぁ、とそんなことに感心。


最初と最後の挨拶で、ダイアナがピアノから離れたとき全身を見ることができた。黒のスカート姿が十代か二十代の若い女性のように見えた。どうも、音楽よりもダイアナその人に感心が強く傾いたライブの感想になってしまった。



会場を出ると小雨が降っている。コンサートのあと、めったに来ない三軒茶屋でもう一軒くらい飲んで帰ろうと思っていたが、雨にひるみ、渋谷行きのバスが停まっていたので、急遽それに乗る。渋谷から山手線で池袋に出て、池袋から東武東上線東武練馬へ直行。


駅をおりて、行き慣れた居酒屋「春日」へ寄る。ここでかき鍋を食べながら、酎ハイを飲み、くつろぐ。