かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

戌井昭人著『俳優・亀岡拓次』がおもしろい。

俳優・亀岡拓次 (文春文庫)

俳優・亀岡拓次 (文春文庫)


横浜聡子監督の映画『俳優・亀岡拓次』がおもしろかったけれど、その原作もたのしい。電子書籍でも読める。戌井昭人(いぬい・あきと)という作家のことは知らなかったが、この作品でファンになってしまった。


亀岡拓次は、脇役専門の俳優だが、監督や撮影スタッフには、ふしぎと人気がある。主役をとろうとかという貪欲さはなく、脇役に徹している潔さゆえなのか、ただ人柄のよさゆえなのか、出演依頼の絶えることがない。


亀岡は、さまざまな場所へロケにいく。小さな役なので、撮影が遅れると、その日の出番がなかったり、早く出番が終わってあとの時間があいたり、とにかく待つ時間が長い。亀岡拓次は、「映画は待つのが仕事」と割り切っていて、不満をもつこともない。そういうところが監督や撮影スタッフに好かれる要因かもしれない。


撮影が終わると、彼はロケ地の居酒屋へいく。地方ロケなら、地方の居酒屋の暖簾をくぐる。亀岡拓次の唯一の趣味は、ロケ先の居酒屋でひとりお酒を飲むこと。羨ましい!


亀岡の出演する映画のあらすじが紹介されるが、どれもなんだか変でおもしろい。シナリオが紹介されたりもする。しかし、これもどこか変で、笑ってしまう。


久々に笑える小説に出会った。奥田英朗の『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』以来かもしれない。亀岡拓次が登場する第2作『のろい男 俳優・亀岡拓次』も、電子書籍で読める。これも、おもしろかった。もっと続きが読みたい。


のろい男 俳優・亀岡拓次

のろい男 俳優・亀岡拓次