かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

「つげ義春と調布」展を見にいく(1月18日)。




1月18日㈬。晴れ。
Tさんと調布で待ち合わせ、つげ義春と調布」展を見にいく。


もともとひとりで行くつもりでいたけれど、別件でTさんから電話があり、「調布へ『つげ義春展』を見にいく」と話したら「いっしょに行く」といってくれた。


Tさんが住んでいるのは八王子なので、調布は地理的にも近かった。


午後1時に待ち合わせたが、はじめてで道に迷う可能性があるので、早めに着いた。展示会場で待ち合わせなので、待ちくたびれる、という心配もない。一応到着のメールをいれて、展示品を見る。


展示場でいただいた「パンフレット」によれば、つげ義春が、はじめて調布へ転居したのは1966年(関係ないけど、ビートルズが来日した年)。


最初は、水木しげるの仕事を手伝うためだったが、それから何度か調布市内を転居。1978年には、調布に念願のマンションを購入し、いまも住んでいる(はず)。


というわけで、つげ義春と調布のつながりはかなり長い。


無能の人など、後半期に書かれた作品の多くに、調布の風景が描かれている。



会場のモニターにも流れていたつげ義春さんの貴重な映像。
www.youtube.com




つげさんの作品に描かれた背景が、調布のどの場所をスケッチし、作品に登場させているのか、その元になっている場所の写真が並べられて展示されている。


マンガに描かれた、とんかつ屋さん、ラーメン屋さん、どちらも実際につげさんが住んでいたアパートの近くにあったものだった。


まもなくTさん来る。最初いっしょに、あとはそれぞれのペースで会場を回る。


そういえば、平日にもかかわらず、見学者が多かった。いまだつげ義春ファンというのが、きっとわたしのようにあちこちに隠れているのだろう。


つげ義春が休筆して長いが、旧作品の文庫化、全集の刊行、映画化など、ファンは忘れたくても、忘れることができない。


Tさんは、学生時代、わたしが「つげ義春がすごい! すごい!」と騒いでいたので、そのころの代表作は全部読んでいる。興味深くひとつひとつの原画と写真を見比べていた。


つげ義春のマンガに登場するのは、社会からはじき出された人物ばかり。偉い人もお金持ちも出てこない。


3百円のお金をもって、近所へ散歩にいく。


つげ作品には、「□千円」という単位は出てこない。いつも「□百円」の世界だ。


3百円のお金をもって散歩に出かけ、ちょっとした賭け事に参加して、オケラになると、激しい自己嫌悪に陥って「わが現状」をはかなむ。


情けないが、ユーモラスだ。たぶんに誇張があるけれど、笑いの奥に本気がまざっているので、へんなリアリティがある。つげさん独自の世界だ。


隠者志向、乞食への恐れと憧れ。


実弟の漁師小屋に住み、ローソクで灯りをともし、みかん箱の上で小説を書いていた川崎長太郎(1901年 - 1985年)という作家がいた。


川崎長太郎を愛読している」ーーと、つげさんがインタビューで答えているのを読んだときは、ピッタリしすぎではないか、とおもった(笑)。


1960年代〜1980年代にその多くが描かれたつげ義春作品が、いま英語とフランス語に翻訳され、フランスで原画展もひらかれた。そんな快挙は彼ににあわない(笑)、と思いつつ、しかし彼の描いたものが外国でも紹介され、認められたのは、ファンとしてうれしかった。


フランスの原画展がヒントになって、日本でもこの展覧会がひらかれたのではないだろうか。


調布という町の背景を知って、作品を読むときの興味がさらに増しそうだ。


調布は、つげ義春の聖地になった。



Tさんが調布駅の駅ビルの本屋さんが、「つげ義春コーナーをつくってるよ」と教えてくれたので、いってみる。


三冊の紙の本を購入してしまった。思わぬ出費も痛いが、最近買った「Kindle Paperwhite」という電子書籍リーダーの読書にはまっているわたしに、紙の本を読む時間の隙間があるのだろうか。



調布から新宿へ。新宿西口の小田急ビルにある居酒屋チェーン「天狗」でTさんと飲む(正確にいえば、Tさんはお酒を飲まないが)。