- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/10/19
- メディア: 文庫
- 購入: 26人 クリック: 337回
- この商品を含むブログ (279件) を見る
マーティン・スコセッシ監督の『沈黙』を見て、なにかものたりない気がしたので、原作になっている遠藤周作の『沈黙』をひさしぶりに読み返してみた。それでわかったことは、原作は宣教師ロドリゴの内面の葛藤が緊迫感のなかに繰り返し描かれていること。映画もある程度描かれているが、原作ほど強く迫ってこない。
ロドリゴは、しばしばキリストが受けた苦難を想像し、そのときキリストがどのようにあったか、どう身を処したか、を考え、自分も困難を切り抜けようと思う・・・そういう場面がなんどか出てくる。自問自答だけれど、彼にとっては<神との対話>であり、ロドリゴの信仰が深ければ深いほど、信者を救えない自分の無力さを痛感して、彼は苦悶する。
★
ロドリゴは、信者たちが処刑されるたびに、神に問いかける。
「あなたは、なぜ沈黙するのか」(なぜ信者を救おうとしないのか)
この問いかけが原作も映画も『沈黙』という作品の中心に置かれているけれど、原作は、宣教師ロドリゴの<神との対話>が頻繁なだけ、映画よりも強くこちらに訴えてくる。
マーティン・スコセッシ監督の映画は、原作を忠実に描いているけれど、映画的表現で、もっとロドリゴの内面的な葛藤を描くことはできなかったのかな、とふたつを比べておもった。