9月6日、木曜日。晴れのち曇り。
「ポレポレ東中野」で限定公開されたとき見逃していた、渡辺謙一監督のドキュメンタリー映画『国家主義の誘惑』を、「渋谷アップリンク」へ見にいく。
フランス在住で「天皇と軍隊」(2009年製作・15年日本公開)が話題を集めた渡辺謙一監督が、日本社会を誘う政治の正体や日本人のナショナリズムについて問いかけるドキュメンタリー。
世界的にナショナリズム(国家主義)が進行する中、明治維新から今日にいたる日本人の天皇・憲法・戦争観はどのようにして醸成されていったのかを、国際関係史、地政学の観点から、国内外の論客のインタビューを交えて検証し、浮き彫りにしていく。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/89092/
日本が歩んだ近代の歴史を、フランスの歴史学者などの一歩離れた視点でとらえようとしたもの。現状の日本については、日本の政治家や政治学者も発言している。
外国の歴史学者がとらえた日本の歴史は、それほど異質なものではなく、西洋のあとを追いかけて近代化を急ぎ、アジアを侵略していく経過が手短かに映像を組み合わせて描かれていく。わたしたちが知っている日本の近代史とそれほどちがわない。
しかし、現在、この日本の近代史を修正しようとする政権が「一強」といわれるほど高い支持を得ていることが異常ではある。
ジャーナリストの金平茂紀(かねひら・しげのり)氏は、戦争前の日本にもどっている、とインタビューに答える。戦前日本を戦争に導いた悪法が、言葉を変えて次々復活している。
『永続敗戦論』で話題になった政治学者・白井聡(しらい・さとし)氏は、戦前戦中と天皇に隷属した日本は、戦後そっくり同じように、アメリカに隷属している、と話す。隷属の精神は、戦前・戦中・戦後と続いている。天皇は、あのお言葉のなかで「象徴」という言葉をなんどか繰り返した。憲法が定める「象徴天皇」という役割を積極的に実践していこうとした精神は、改憲の危機にある日本国憲法を尊重しようとする心のあらわれでは、ともいう。
自民党参議院議員の山田宏(やまだ・ひろし)氏は、南京虐殺の記録はどこにもない、と力説。
この映画でみる外国から見た日本の近代史が、わたしには、ごく順当な歴史観のようにおもえるけれど、いまの安倍政権を支持するひとたちには、それが屈辱的・自虐的な歴史観として感じられるようだ。