かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

韓国映画『共犯者たち』を見にいく(12月18日)。

f:id:beatle001:20181221134011j:plain




12月18日、火曜日。「ポレポレ東中野」へ、チェ・スンホ監督の『共犯者たち』を見にいく。


以前ここへ『沖縄スパイ戦史』を見にきたときは、暑い夏で、炎天下、外を歩くのが苦痛だったが、この日は映画館にこもるのがもったないような、晴れたいい日だった。


ポレポレ東中野」は、ネット予約ができないので、はじまりの12時20分より40分ほど早くきて、整理券付き入場券を買う。そして、映画館のあるビルを出て、駅へ少しもどった小さな喫茶店へ寄って、コーヒーを飲む。



12時に映画館へもどると、地下2階の受付前は、開場を待つひとでいっぱいだった。整理券17番をもって入場、途中トイレにもいきやすい(笑)、いちばん後ろの端の席をとる。





映画『共犯者たち』予告編



イ・ミョンバク(李明博)とパク・クネ(朴槿恵)政権の約9年間にわたる言論弾圧の実態を告発した韓国製ドキュメンタリー。


2008年、米国産牛肉BSE問題などの報道によって国民の支持を失いかけたイ・ミョンバク政権は、公共放送局KBSや公営放送局MBCをターゲットに、メディアへの露骨な介入を開始。政権に批判的な経営陣は排除され、調査報道チームは解散、記者たちは非制作部門へと追いやられた。


両局の労働組合ストライキで対抗したものの、政権が送り込んだ新たな経営陣は解雇や懲戒処分を繰り返し、検察も容赦なくストを弾圧。両局は政府発表を報じるだけの「広報機関」となった・・・(略)。


(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/89746/


わたしは韓国のことについて何も知らない。でも、映画は、韓国の民衆やメディアの、権力との激しい闘争によって、現在の民主化への道が拓けていったことを教えてくれる。


タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年製作、2018年日本公開)、『1987、ある闘いの真実』(2017年製作、2018年日本公開)は、その闘いを描いたフィクションだった。


今回の映画『共犯者たち』は、大統領という最大権力者の弾圧と、それに屈しないジャーナリストたちの闘いを描いたドキュメンタリー映画。もちろん、本人たちが登場し、カメラはその場面を目撃し、彼らの姿を映していく。


イ・ミョンバク大統領は、「公共放送局KBS」や「公営放送局MBC」のトップに圧力をかけ、政権を批判するジャーナリストを前線の記者から追放していく。


KBSとMBCの記者たちや社員は、ライバル関係を越え、結束してストライキで抵抗する。


しかし、イ・ミョンバク政権は、さらに弾圧を強め、両局のトップを社長の座から追い出し、あらたに自分の息のかかった「権力の共犯者たち」をKBSとMBCへ送り込んでいく。


新しく就任した政権の傀儡(かいらい)社長たちは、猛威をふるって、批判報道を弾圧。「公共放送局KBS」も「公営放送局MBC」も牙を抜かれ、政権の「広報放送局」になりさがっていく。


しかし、監督のチェ・スンホをはじめ、傀儡社長たちから解雇された記者、プロデューサーたちは権力に屈しない。


彼らは、ニュース・サイト「ニュース打破」を立ち上げ、公共放送・公営放送が隠蔽する真実を報道し、弾圧に対抗していく。


パク・クネ政権になっても状況は変わらない。


2014年、「セウォル号沈没事件」が起きたとき、「公営放送局MBC」をはじめ、ほとんどのマスコミが、「全員救助」の大誤報を流した。


実際には、あとで300名を越える死者・行方不明者がいたことが判明する。


現場の記者は被害のあることを伝えたにもかかわらず、政権に不都合な真実は隠蔽され、マスコミは依然として「全員救助」の報道を流し続けた、という。


チェ・スンホ監督は、公営放送を破壊した主犯、イ・ミョンバク元大統領を追う。


そして、こんな質問を元大統領に投げる。


「こんにちは。大統領、久しぶりにお会いします。マスコミを破壊した主犯という批判について、どう思われますか?」



マスコミの沈黙は怖い。そのことを、この映画は痛切に教えてくれる。


先日、「週刊文春」(12月20日号)が、元NHK記者・相沢冬樹記者の「森友スクープ記者はなぜNHKを辞めたのか」を掲載している。


相沢記者は、「森友事件」をずっと取材していたが、NHKはそれをあるがままに報道しようとしない。やがて記者をはずされ、自ら退職する。「週刊文春」は、その経緯を詳しく報じている。


一時期、テレビのニュース・キャスターやコメンテーターが次々新しくスゲ替えられたのも記憶に新しい。


官房長官の秘書から、テレビ朝日へぢきぢきに苦言がはいったと告発しているのは、元経産官僚の古賀茂明氏。


東京新聞の望月衣塑子記者が、パンフレットに「これは〝対岸の火事〟ではない」というコメントを寄せている。




[付記]
この日、残念ながら時間の関係で、もう1本のドキュメンタリー韓国映画『スパイネーション 自白』は見ることができなかった。いつかチャンスをみつけて見にいきたい。



映画を見てから、駅の近くにある昼呑みのできる居酒屋へ寄る。日替わりランチを注文したがもう終わっていたので、「あっさりラーメン」を食べながら、ホッピーを飲む。