左から、三女・千佳、次女・佳乃、長女・幸、四女・すず。
鎌倉、極楽寺近くの古民家に暮らす四姉妹のものがたり、吉田秋生(よしだ・あきみ)作『海街diary』が第9巻で完結した。
第1巻の『蝉時雨のやむ頃』が発売されたのが、2007年4月16日(「ウィキペディア」参照)。そして、完結編の第9巻『行ってくる』が2018年12月10日に発売。11年間、順次発売されて完結した。
といっても、わたしが読みはじめたときは、すでに第5巻『群青』 (2012年12月10日発売)までが出ていた。
第1巻の『蝉時雨のやむ頃』を読んで感動。最初はコミック・レンタルで、第5巻まで読んだが、他のひとたちにも見せたくなって、当時出ていた「全5巻」を買ってしまった。
鎌倉に住む四姉妹は、谷崎潤一郎の小説、京都の四姉妹を描いた『細雪』をも連想させる。わたしには、鎌倉が舞台であるほうが身近でもあり、時代背景が現代であるので、『海街ダイアリー』のほうが、共感できる要素が多かった。
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長女・幸は、看護師。まだ妹たちが幼かったので、父と母がいなくなってからは、母親役をやって妹たちを育てたので、性格は少しきついくらいで、責任感が強い。
次女・佳乃は、鎌倉信用金庫に勤務。美人だが酒癖が悪い。ときどきどこかで飲んで記憶を失い、「がてん系」の男を連れて帰る。なぜか、そういう男を選んでしまう(笑)。
三女・千佳は、スポーツ用品店に勤めている。一風つかみにくい性格。スポーツ用品店の店長と同じく、アフロヘアにしている。第9巻で、ついにこの店長と結婚。
四女・すずは、中学生。三姉妹をすてて家を出た父の愛人の子ども。父の葬儀に出たとき、長女・幸は、このすずがおとなのなかで、ひとり肩身の狭いおもいをしているのをみて、「すずちゃん、鎌倉に来ない?」と突然わかれぎわに呼びかける。すずは、躊躇することなく「いきます!」とこたえる。
そこから、鎌倉の古民家に住む四姉妹のものがたりがはじまる。
ものがたりには、鎌倉のあちこちの場所がリアルに描かれている。川端康成の『古都』、谷崎潤一郎の『細雪』のように、舞台になる街を知れば、より描かれているものがたりが現実感を増す。
「すずちゃんの鎌倉散歩」という本が出ていたので、わたしは、この本をもって鎌倉散歩をしたこともある。四姉妹の住む、極楽寺駅周辺を何度か歩いた。たいていは、長谷で降りて、極楽寺駅までひと駅散歩する。途中、作品にしばしば登場する御霊神社がある。この神社のすぐ前を、江ノ電が走りぬけるので、カメラを構えた観光客がパチパチ写真を撮っている。
極楽寺駅から江ノ電に乗って、近くの海を見にいくのもたのしい。
すずちゃんの鎌倉さんぽ―海街diary (フラワーコミックススペシャル)
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2015年には、是枝裕和監督が映画化した。映画化が発表されたときから、公開までが待ち遠しかった。
長女・幸を、綾瀬はるか。次女・佳乃を、長澤まさみ。三女・千佳を、夏帆。四女・すずを、新人の広瀬すずが演じた。
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是枝裕和監督は、鎌倉の四季の移ろいのなかに、四姉妹の1年間の生活をていねいに描きこんだ。その年の映画のいろいろな賞を独占した。
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第9巻では、千佳がスポーツ用品店の店長と結婚。四姉妹の古民家から近くへ引っ越す。すずは、サッカーの才能を買われ、サッカーの強い高校へいくため、古民家を出ていく。
古民家には、長女・幸と次女・佳乃が残る。
長女・幸と次女・佳乃には、好きなひとがいる。その恋のゆくえはどうなっていくのか?
最後が大円団ではなく、余韻を残して終わっているところがいいな、っておもう。
四姉妹に会えなくなるのはさびしいが、吉田秋生さんは、鎌倉を舞台にした新作を考えているというので、それを楽しみに待ちたい。