かぶとむし日記

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広瀬奈々子監督『夜明け』を見る(1月26日)。

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映画『夜明け』。




1月26日、土曜日。


渋谷アップリンクへ、広瀬奈々子監督の『夜明け』を見にいく。


午前10時のセンター街。お店はほとんど閉まっている。ときどき24時間営業の店だけ開店している。いつも人であふれている道路の脇では、トラックがとまって、荷下ろしの作業をしている。風が冷たい。まだ朝が終わっていない感じ。



映画『夜明け』予告編




広瀬奈々子監督は、是枝裕和西川美和の両監督がたちあげた制作集団「分福」の出身。


両監督の監督助手を経て、これが長編監督としての第1回作品。脚本はオリジナルで、広瀬奈々子監督が書いている。


異常な事件や人物を描くのではなく、ふつうにいそうな人物たちの心の奥を、じっと見つめるような作風は、是枝裕和西川美和作品にも通じている。



心に傷をもった青年(柳楽優弥)が、自殺未遂かどうかわからないまま、木工所を経営する哲郎(小林薫)に助けられる。


青年は、自分の名前を「シンイチ」というけれど、明らかに偽名のようだ。詳しい事情は語られぬまま、「シンイチ」は哲郎の木工所で働きはじめる。


なにかにつけて、「シンイチ」を大切にかばう哲郎だったが、彼は以前「真一」という息子を交通事故で失っていた。


自分は「真一」ではない、と、哲郎の愛情に感謝しながらも、青年は彼の庇護から離れていこうとする・・・。



月並みな解決はない。


心を寄せ合う青年と哲郎だけれど、青年は、自分への愛情の陰に亡くなった「真一」を感じ、その代役を生きるつもりはないことを、哲郎へ知らせる。その言動は、青年が哲郎へ突きつけた冷たい拒否にもみえる。


青年は「シンイチ」ではなく、本名の「芦沢光(あしざわ・ひかる)」として生きていこうとするが、先にあてがあるわけではないし、結局何も解決していなかった。



主演は、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004年)で主演した柳楽優弥(やぎら・ゆうや)。あのとき子役だった柳楽優弥が、是枝裕和監督の「分福」に所属する広瀬奈々子監督のデビュー作に主演している。彫りの深い顔、強い眼差しは少年のころとかわっていない。


『誰も知らない』では、自然な子役を演じていたが、『夜明け』では、抑制された表情のなかにいろいろな感情を表現している、ように感じられた。


俳優・柳楽優弥のなかに、15年近くの歳月が流れている。



映画館を出てセンター街を歩くと、渋谷の中心地らしい活気がもどっている。お店の前はどこもひとがあふれていた。最近寄るようになった「テング酒場」で、ホッピーと日替わりランチ。


渋谷駅のスクランブル交差点近くの広場は、きょうは何もやってなかった。JR渋谷駅から山手線に乗る。