かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

李相日監督『流浪の月』を見る(5月14日)。


映画『流浪の月』。




5月14日(土)。


イオンシネマ板橋」で妻と合流。李相日(りさんいる)監督広瀬すず松坂桃李主演『流浪の月』を見にいく。





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少女更紗(さらさ)は、規律にとらわれない自由な父と母と幸せに暮らしていた。しかし、父が病いで亡くなると、母は新しい恋人と一緒に、更紗を残して、突然家を出て行ってしまう。


更紗は、伯母の家へ引き取られるが、家庭内の空気は一変、規律にうるさく、更紗がいままでいた父母との生活とはまるで違っていた。


そして更紗がいやだったのは、夜になると、その家の従兄(いとこ)が更紗の部屋へ忍び込んでくる。それを更紗は誰にもいえなかった。


更紗は伯母の家に戻るのがいやで、いっしょに遊んでいた友達が帰ってからも、ひとり公園のベンチで本を読んだりして過ごしていた。


雨の降る日。更紗がベンチで濡れながら本を読んでいると、いつも小さな子供たちが遊ぶのを見ていたお兄さんが「うちへくる」と話しかけてきた。


更紗は「うん」とうなづく。伯母の家には帰りたくなかった。


お兄さん=文(ふみ)は、更紗に触れてこなかった。更紗は「わたしはタイプじゃないのかな?」とおもいながら、文(ふみ)のやさしさに甘えた。


文は「家へ帰ってもいいんだよ。更紗の好きにして」といってくれたが、更紗は伯母の家へ帰りたくなかった。


文(ふみ)が大学へいってしまってからも、更紗は自由な時間を過ごした。


父母と暮らしている頃は、夕飯に、ご飯ではなくアイスクリームを食べたりしていたが、伯母の家ではそんな自由はきかなかった。更紗は、久しぶりに夕飯にアイスを食べたりして、幸せだった。


しかし、テレビでは少女の行方不明が話題になっていた。更紗の顔もテレビに映っている。


しばらくは文のアパートのなかにいたが、更紗は外へ文を誘った。公園で遊んでいたとき、警察がやってきて、更紗と文をつかまえ、ふたりを引き離した。


文は、女児誘拐犯の烙印を押された。


物語は、それから15年後にとぶ。更紗と文は再会する。



誘拐犯と、その犠牲になった少女という烙印は、15年後になっても消えない。SNSにはその記録が残っている。更紗は、文と幸せな2ヶ月を過ごしていた。それなのに、文は誘拐犯として逮捕された。


「文は誘拐犯じゃない」と更紗は、警察でも信頼できそうな友達にも話したが、信じてもらえない。


更紗が、文に寄せる好意はストックホルム症候群と説明された。


ストックホルム症候群」=精神医学用語の一つ。誘拐や監禁などにより拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有することによって、加害者に好意や共感、さらには信頼や結束の感情まで抱くようになる現象。




コトバンク」の「ストックホルム症候群」の解説より。



少し前に妻もわたしも原作を読み返したばかり。


なので、迷うことなく映画の世界に遊べたが、映画から『流浪の月』にはいったひとは、ところどころシーンの意味がわかりにくいのでは、とおもったが、どうなんだろう? 


文を演じた松坂桃李激ヤセは、役作りの成果。すごいな。


以前松山ケンイチが、実在の将棋指し「村山聖(むらやま・さとし)」を演じたとき、体重を20キロ増やしてのぞんだと知って感心したが、今回の松坂桃李のヤセ方にもおどろいた。


妻とわたしは、ふだん減量に苦心しているが、一向に成果があらわれない。映画を見たあと、妻が「よーし、わたしたちもトーリ(桃李)をめざそう!」といった。


是枝裕和監督の『海街ダイアリー』で、中学生の可愛い「すずちゃん」を演じた広瀬すずが、すっかり大人になってしまった。


同棲している亮(とおる)役の横浜流星と濃厚なラブシーンを演じるのは、ちょっとドキッとした。


それだけでなくて、本格的な女優としての演技をみせてくれる。


文の松坂桃李(感情を出さないむずかしい役)、更紗の広瀬すず亮の横浜流星・・・3人がよかった。


もうひとりわたしがずっと好きだった多部未華子も出ているが、割り当てられている役が、おもしろくなかった。出番も少ない。



李相日(りさんいる)監督の作品は、『悪人』(2010年)でも『怒り』(2016年)でもそうだけれど、アクが強い。コッテリ味というか。


映画を見た、という充足感は大きいかもしれないが、わたしは一方で「昔風ラーメン」のような、一見あっさりしていて深い味(例えば、是枝裕和監督今泉力哉監督の作品)の方が現在は好きかな、とおもった。



映画館のある5階のレストランで食事して、川越へ向かう電車に乗る。