『二階堂家物語』。
1月26日、土曜日・・・の続き。
午前、渋谷のアップリンクで広瀬奈々子監督の『夜明け』を見たあと、川越へ帰る。
途中ケイタイで到着時間を連絡する。川越駅に、クルマで、妻と妻の姉が迎えにきていた。
妻から「きみの体力が残っていたら、『二階堂家物語』を見にいこう」といわれる。渋谷で飲んだお酒も醒めかかっているし、石橋静河を早く見たいので、そのまま「ウニクス南古谷」へいくことにする。
午後4時10分から、イランの女性・アイダ・パナハンデ監督の『二階堂家物語』を見る。
奈良県天理市を舞台に、名家の跡継ぎ問題に頭を抱える3世代の家族たちの愛と葛藤を描くヒューマンドラマ。
二階堂家の長男である辰也はひとり息子を亡くし、さらに妻も家を出て行ってしまった。代々続く名家・二階堂家の跡継ぎ問題に気を揉んでいる辰也の母・ハルは、辰也に望まぬ相手との再婚を迫る。
そんな辰也も娘の由子に婿養子を取るように過剰なまでの期待をかけていた。
辰也役を加藤雅也、由子役を石橋静河が演じるほか、町田啓太、白川和子、田中要次、陽月華らが顔をそろえる。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/89511/
監督は、イラン人のアイダ・パナハンデ。脚本は、アイダ・パナハンデとアーサラン・アミリ。どちらも、はじめて聞く名前。
エグゼクティブプロデューサーを務めるのが、樹木希林、永瀬正敏が主演した映画『あん』の監督、河瀬直美。エグゼクティブプロデューサーがどういう仕事をするのか、わたしは知らない。
そして、主演のひとりが石橋静河。
石井裕也監督『夜空はいつも最高密度の青空だ』(2017年)、三宅唱監督『きみの鳥はうたえる』(2018年)に続く、石橋静河の重要作品の最新作。
奈良の天理が舞台。
旧家に、男の子の後継ぎが絶えてしまうかもしれないことで、家族全員が悩む。簡単にいえば、そんなテーマ。
わたしのように「家系」の継承に関心のうすいものには、このテーマ、ピンとこない。
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後を継ぐ辰也(加藤雅也)のひとり息子が亡くなってしまった。
辰也は、由子(ゆうこ、石橋静河)に婿養子をとってあとを継がせようか、と考えるが、由子には外国人の恋人がいることがわかる。
由子に、家の事情に従う気持ちはない。
辰也には、沙羅(陽月華)という好きな女(ひと)がいるが、結婚を迫ると、「わたしはもう子どもを産めないから」と断られる。辰也は、後継ぎの、解決の糸口を見出すことができない。
恋愛よりも、家の事情が優先する旧家の問題を描いている。しかも、その脚本を書いて演出しているのが外国人の女性監督。接点はなんなのか、まだわからない。
テーマには共感しにくいが、描写はていねいで、辰也を演じた加藤雅也も、由子を演じた石橋静河も、感情を抑えた演技で見応えがあった。
辰也が想いを寄せる、沙羅という女性を演じた陽月華(ひづき・はな)という女優が美しい。幼稚園へ通う小さな女の子がいるシングル・マザーの役。
石橋静河は、旧家のなかで、自分の恋愛に忠実に生きようとする女性を演じる。愛情を犠牲にして、婿養子になってくれるひとを、あえて捜そうとはしない。
父の再婚にも、「自分の好きでもないひとと結婚なんてしないで」という。
家の継承を犠牲にしても、それぞれが自分の愛情を中心に生きていこう、という話になっていくのかとおもうと、そうでもない。
辰也は、亡くなった祖母が「後継ぎ」をつくるために結婚させようとした幼馴染との関係を断ち切ろうとしない。
映画がおわった段階でも、「後継ぎ」のゆくえははっきりしない。
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前にあげた2作では、東京と函館という都会に生きる女性を演じた石橋静河が、この作品では奈良の旧家に生まれた女性を演じている。
個人的な好みでは、都会に生きる女性を演じる石橋静河により魅力を感じるけれど、この映画でも、おおげさな動きはまったくなくて、ちいさな表情の変化で、存在感のある演技をみせてくれる。
石橋静河の姿が映されるだけで、彼女がいま抱えている内面の葛藤が透けてみえてくるような、そんな繊細な演技に惹かれてしまう。
見終えてみれば、自分が、この映画にけっこう感動していることに気づいた。
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途中、鍋ものの食材を買ったあと、レンタルDVD屋さんへ寄る。わたしは見てしまったが、『焼肉ドラゴン』を借りる。わたしのおすすめ作品で、妻も見たがっていたが、レンタルで見られるようになった。
妻の姉は、わたしの家へ泊まる。