日記が、実際の日と、それを書く日とがだんだん離れてしまう。記事が短くても、早く追いつかなきゃ、自分でも思い出せなくなってしまう(笑)。
10月6日、日曜日。
妻の運転で、「ウニクス南古谷」へ、恩田陸原作、石川慶監督の『蜜蜂と遠雷』を見にいく。
以前原作をダウンロードして読もうとおもいながら、ぐずぐずしているうちに、妻のほうが先に読んでしまったので、「おもしろかった?」と聞いたら、「きみはクラシックを聴かないからどうかなあ」といわれた。
妻もクラシックをそれほど熱心に聴くわけではないけれど、わたしよりは聴く。そういわれてから、読まないままに過ぎてしまった。
映画なら音楽をぢかに聴けばいいし、なんといっても松坂桃李と松岡茉優だし、とおもって見にいく。
結論からいっておもしろかった。天才ピアニストたちの競演(役者が弾いているわけではないが)に惹きこまれた。
ピアノが激しい打楽器のように演奏される。
以前、ジェームス・ブラウンの伝記映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』(2015年)を見たときのことを思い出す。
あの映画のなかで、チャドウィック・ボーズマン演じるジェームス・ブラウンが、バックのバンド演奏が気にいらずイライラするシーンがある。
なんどか練習を繰り返したあと、ジェームス・ブラウンがいった言葉がいまでも頭に残っている。
「いいか、ブラスもギターもピアノもドラムになるんだ。全員ドラムになるんだ」
言葉は正確ではないが、彼はそんなことをいう。
すべての楽器が打楽器になることで、ジェームス・ブラウンの激しいヴォーカルとダンスが引き締まる。
まるで関係ないときに、この言葉をときどき思い出すことがある。
映画『蜜蜂と遠雷』でも、打楽器のように激しく鍵盤を叩くシーンを見ていて、頭にジェームス・ブラウンが浮かんだ。
★
母を亡くしてから、自信を喪失し、このコンテストに復帰をかける元天才少女を演じるのが松岡茉優。見る映画ごとに魅力的な女優になっていく。演奏シーンの表情も迫力があった。
結婚し、家族をもち、それでもピアノが弾きたい。「生活者のピアニスト」がいてもいいのでは、と自称する松坂桃李もよかった。
藤井道人監督の『新聞記者』(2019年)では、上司の不本意な命令と自分の良心との葛藤に苦悩する官僚を演じた。
ここでは技量は天才たちには及ばないものの、家族を養うべつな仕事をもっても、変わることなくピアノを愛する、やさしい父・夫を演じている。
彼は最後までは残れないが、決勝に残った天才たちのすばらしい演奏を素直に賞賛する。
クラシックのタイトルを見てもその音楽が浮かんでこないので原作を読んでみようとまではおもわないけれど、映画は十分にたのしめた。
★
James Brown - I Feel Good (Legends of Rock 'n' Roll)
おまけ(笑)。「ソウルの帝王」または「ゲロンパ」の異名をもつジェームス・ブラウン。