かぶとむし日記

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吉田恵輔監督の映画『空白』を見にいく(9月26日)。

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9月26日(日)。


川越に近い(クルマなら)「ウニクス南古谷」へ、吉田恵輔監督・脚本の『空白』を見にいく。9時20分からの上映。


いつも夜更かししているので映画館で眠くなるが、きょうは朝方二度寝したので、わりと意識がはっきりしている。




「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。


女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。



(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/92797/


www.youtube.com




前回見た吉田恵輔監督・脚本の『BLUE ブルー』は、試合にからっきし勝てないボクサーを主人公にしたボクシング映画の傑作だった。今回はボクシング映画におとらない迫力全開の社会派サスペンス。はじまった瞬間から凄い迫力で惹き込まれ、寝る暇なかった(笑)。


エグゼクティブ・プロデューサーは、『新聞記者』、『i(あい)・新聞記者』、『パンケーキを毒見する』の河村光庸(かわむら・みつのぶ)。どの作品も強い社会性をもっている。この『空白』も身近な生活に起こりうる題材を描いている。


吉田恵輔監督の作品には、主要人物のなかに、あまりかっこよくないひとが出てくる(笑)。でも、吉田恵輔監督の映画は、そのかっこ悪さって、人間のひと皮剥いた正直な姿ではないか、っておもわせる力がある。だからか、「しょうがねえやつだなあ」とおもいなから、いとしさを感じる。


などなど‥‥。


今回は、本来かっこいい俳優の松坂桃李が、気弱な頼りない男を演じている。





万引きした女子中学生・添田花音(伊藤蒼)は、スーパーの店長・青柳(松坂桃李に追われ、必死に逃げているうちにクルマに衝突してしまう。


そのときはまだ立ちあがろうとする気力があったが、反対側からきたトラックの下敷きになり、そのまま引きづられて死亡する。


花音の父・添田充(古田新太は、凶暴になり、娘は万引きなどしていない、スーパーの店長・青柳のウソだといって、ひらあやまりにあやまる青柳を罵倒する。それをマスコミが押しかけて報じる。


を演じた古田新太がド迫力で、青柳につきまとい恫喝。スーパーへ、青柳の自宅へ、やってくる。気持ちが悪い。


花音を最初にクルマで撥ねた女性は、自責の念に耐えられず自殺してしまう。


青柳は、事故のあともスーパーを続けているが、事故の原因をつくった重圧に押しつぶされて、仕事にならない。


自殺をはかるが、従業員の草加部麻子(寺島しのぶにとめられる。しかし、マスコミに中傷的な記事を書かれ(青柳は、むかし痴漢をやったことがあるとか)、客足は遠のき閉店に追い込まれる。



きのう見た『由宇子の天秤』もそうだが、この映画にもマスコミへの不信感が滲んでいる。事実を歪め、悲劇を広めることにひと役買っている、と。


松坂桃李演じる青柳は気弱で善良な青年。古田新太演じる充は、娘を失った怒りに正気を失っているが、根っからの悪人ではない。


この事故にかかわったひとたちに悪人らしい悪人はいないのに、悲劇が広がっていく。



以前やはり身内の事故で人生を変えられてしまった主婦(尾野真千子)を描いた『茜色に焼かれる』(石井裕也監督)を見た。この作品には、筋立てのいくつかにモヤモヤ感が残った。が、この『空白』には、自然に感情移入できた。


それと、河村光庸プロデューサーは、『新聞記者』松坂桃李を、今回も主演のひとりに起用している(選んだのは、吉田恵輔監督かもしれないが)。松坂桃李の演技に、手応えを感じているのではないか。


松坂桃李は、親から譲られたスーパーを経営。頼りないが、気弱で誠実な青年をていねいに演じていた。



帰り、回転寿司で少し早めのお昼。アルコールがないので、ノンアルコール・ビールを飲む。ないよりはマシだけれど、いたって味気ない。