かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ブレイデイみかこ『ワイルドサイドをほっつき歩け』 〜 ルー・リード『ワイルド・サイドを歩け』 〜 川村元気監督『百花』を見にいく(9月9日)。




9月9日(金)。
イオンシネマ板橋」へ川村元気監督、原田美枝子菅田将暉主演の『百花」を見にいく。


少し早く出て、途中の「コメダ珈琲」で、40分くらいコーヒーを飲みながらブレイディみかこさんの『ワイルドサイドをほっつき歩け』を、読みかけのところから読む。


ブレイディさんの軽快な文章で、イギリスの「おっさん」たちの奮闘記が描かれている。「おっさん」たちの行状は、日本の「おっさん」と、重なるところもちがうところもある(当たり前か!!)。


うらやましいのは、イギリスの「おっさん」たちは、「仕事仕事仕事」を第一義に生きてなくて、集まってはお酒を飲み、みんなでサッカーに熱狂し、時には社会や若者を批判して盛り上がっている。


いまイギリスは緊縮財政で若者が苦しんでいる、という。ところが、いまより社会にゆとりがあった時代に青春時代を送った「おっさん」たちは、その苦しみがピンとこないでいる。


「いまの若者は‥‥」と、わたしたちがよくいう若者批判に似ている。


まだまだ読みはじめ。読了までには、先がある。


『ワイルドサイドをほっつき歩け』というのは、わたしの好きなルー・リード『ワイルド・サイドを歩け』をもじったものだろう。ルー・リードが聴きたくなった。





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ホリーはフロリダ州マイアミからやってきた
合州国ヒッチハイクで横断しながら
道すがら眉毛を引っこ抜き
足を脱毛して「彼」から「彼女」になった


彼女は言う、ねえあんた、危ない方を歩かない?
可愛いキミ、ヤバイ道を歩いてごらんよ

]
キャンディはロング・アイランドからやってきた
楽屋ではみんなのダーリンだった
だけど正気じゃなかったことなんてない
✖️✖️✖️してくれる時ですら


女は言う、ねえあんた、危ない方を歩かない?
こっちのヤバイ道を歩いてごらんよ


そして黒人娘たちが歌う、
ドゥ・ドゥ・ドゥー、ドゥ・ドゥ・ドゥー、…


リトル・ジョーは一度だってただでやらせなかった
誰もがしっかり払わされた
こっちでお仕事、あっちでお仕事
ニューヨークって街は急き立てる


なあベッピンさん 危ない方を歩かないか?
俺も言ったよ、ジョー、ヤバイ方を歩こうぜって


シュガー・プラム・フェアリーが通りに出てきた
南部のソウル・フードが食える所を探してたんだ
アポロ座に出かけて 彼の踊りを見ておくべきだった


仲間は言う、よおシュガー、危ない方を歩こうぜ
俺も言ったよ、ベイビー、ヤバイ方を歩こうぜ


ジャッキーはひたすら暴走してる
一日だけのジェームス・ディーンになったつもり
それなら事故るのは当然で
安定剤を飲んでいたらなおさらだろう


彼女は言った、ねえあなた、危ない方を歩かない?
俺も言った、ハニー、ヤバイ道を歩いてごらんよ


そして黒人娘たちが声をそろえる、
ドゥ・ドゥ・ドゥー、ドゥ・ドゥ・ドゥー、…


https://blog.goo.ne.jp/civil_faible/e/df9170f7e92a4deb50813bab2609fe9e





『百花』は、原田美枝子菅田将暉の出演なら、と俳優で選んだ。内容は予備知識なし。川村元気という監督もはじめて。


10時50分から上映スタート。

菅田将暉原田美枝子が親子役で主演を務めたヒューマンドラマ。プロデューサー、脚本家、小説家として数々の作品を手がけてきた川村元気が2019年に発表した同名小説を、自ら長編初メガホンをとって映画化した。




(「映画.com」から)


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ピアノ教室を運営している美しい母(原田美枝子に、アルツハイマーがはじまっている。進行も早い。


息子の泉(菅田将暉は、結婚していて、母とは同居していない。母の言動のおかしさに戸惑いながら、交流には一定の距離を置いている。


泉はもっと母が若くて、泉が小さかったころを思い出す。ある日、帰宅すると母がいない。探しても探しても母の姿がない。


母は1年くらいして、泉のところへ帰ってきた。しかし、泉は、母に捨てられた「空白の1年間」が埋められずにいる。


母(原田美枝子が見る「アルツハイマー」の景色が、映像でもところどころ描かれる。現実ではない風景。しかし、それがものたりない。


映像ならもっと思い切った表現ができるような気がした。


原田美枝子の迫力ある演技で(けっしておおげさではない)、映像の不足分をカバーしている、ともおもった。


菅田将暉は、いつも自然体の演技で、好きな俳優だが、この映画での印象はもうひとつ。俳優の演技が不足しているという意味ではなくて。


菅田将暉の妻役を演じた長澤まさみは、さらに印象が薄い。良妻のステレオタイプを出ない。


せっかく長澤まさみを選択したのだから、もう少し妻役を彫り深く創造できなかったのかな?


でも退屈な映画ではなかった。むしろいい作品だった。


なんといっても原田美枝子が惹きつける。若いころの美しい母と現在のアルツハイマーが進行している母とが時間を交錯して登場する。


母と息子の間にあった「空白の1年」に何があったのだろう?(これは秘密、笑)



帰り、「日高屋」へ寄って、冷やし中華と餃子をつまみに生ビールとホッピーを飲む。


タブレットをひらいて、『百花』の解説を読んでみる。