かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

石井裕也監督『ぼくたちの家族』を見る(6月1日)


川越から車を走らせて(運転は妻)、入間の映画館で石井裕也監督『ぼくたちの家族』を見る。



長塚京三原田美枝子妻夫木聡池松壮亮という出演陣だけ見てもおもしろくないわけがない、とおもいながらも、不安なのは、<バラバラだった家族が、母の病気を契機に一つに結束していく・・・>という、センチメンタル・ドラマにいかにもありそうなスジガキだ。


しかし、妻夫木聡出演の映画に、そんな凡作は考えにくい。



ストーリーは、予想通りに展開していく。意外だったのは、頼りになりそうな父(長塚京三)が、生活的には借金ばかりこしらえていて、妻にも子供たちにもアテにされていない、という設定。長塚京三にはそういう頼りないイメージがなかったので、おもしろかった。


長塚京三は、ほとんどいつも同じ表情で、悲しみと苦しみを表現していくので、母の重病と借金地獄に追い詰められた男の焦燥感が、深いところでこちらに伝わってくる。名優はこうでなくちゃ。


その抑制的な演技は、妻夫木聡も同じ。もと引きこもりの過去を持つ長男は、頼りにならない父の代りに、この家族の苦境を引き受けようと覚悟するが、それがちっとも英雄的でないのがいい。笑わない妻夫木、終始俯いて戸惑いながら決断する気弱な長男を演じる妻夫木の演技に見入ってしまう。



入間から川越へ戻る国道16号線の途中にある「どん亭」で、妻と昼飯を食べて、自宅へ帰る。