かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

木下恵介監督の傑作青春映画

tougyou

id:tougyouさんのブログで、「野菊の如く君なりき」(1955年)の映画評を読ませていただく。10代の頃、この映画を見て、深い感動を覚えたのを思い出す。tougyouさんがおっしゃるように、この映画の「民さん」役の有田紀子は適役で、きっとぼくはその頃有田紀子の「民さん」に恋してしまったような気がする。白黒画面が美しい。回想シーンは、映像の四隅にふしぎながくぶちがあったような記憶がある。農家の人々の描写もリアリティがあり、特に正夫と民子のおさななじみの関係を理解しながらも、周囲の反対から二人を遠のけて、結果、不幸をひきよせるきっかけをつくってしまう正夫の母がよく描かれていた、とおもう。


tougyouさんは、民子と正夫のクライマックスのセリフをそっくり再現してくれた。

政夫: 「民さんはそんなに戻ってきないッたって僕が行くものを……」
民子:「まア政夫さんは何をしていたの。私びッくりして……
    まア綺麗な野菊、政夫さん、私に半分おくれッたら、
    私ほんとうに野菊が好き」
政夫: 「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き……」
民子: 「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの
     出るほど好(この)もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」
政夫: 「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは
     野菊のような人だ」

民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。二人は歩きだす。

民子: 「政夫さん……私野菊の様だってどうしてですか」
政夫: 「さアどうしてということはないけど、民さんは何がなし
     野菊の様な風だからさ」
民子: 「それで政夫さんは野菊が好きだって……」
政夫: 「僕大好きさ」


木下恵介監督の「野菊の如く君なりき」を見て感動し、すぐに伊藤左千夫の「野菊の墓」を読み、これにも深い感銘を受けた。10代のころだ。そして、しばらくは有田紀子の姿が頭から離れなかった。