かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ポップな日本映画を2本見てきました

飯田橋ギンレイ・ホール。ネット発信のベスト・セラー本として話題になった「電話男」の映画版と、予備知識全然なしの「フライ、ダディ、フライ」を見てきました。

■「電車男」(2005年 監督:村上正典

電車男 スタンダード・エディション [DVD]

  主演:山田隆之、中谷美紀国仲涼子

女性に全く縁のなかった青年が、電車で助けた女性をデートに誘うのに、インターネットサイトに助けを求める……サイト仲間が2人を「電車男」「エルメス」と名付けアドバイスを送る、現代の純情初恋物語。 (「ギンレイ通信 vol.84」より)

ネットから発信された話題作としては、以前韓国映画猟奇的な彼女」という作品がありましたですね。主演女優、チョン・ジヒョンのかわいらしさもあって、映画は日本でも大ヒットしました。これはたしかにおもしろくて、その後、ぼくも韓国映画に関心をもちましたが、結局ぼくがおもしろかった韓国作品は、これ1本だけ(それほど見ていないのであくまで個人的な判断です)。すぐに、ぼくのなかの韓国ブームは終息してしまいました。

電車男」は、日本のネットから生まれた「実話」映画ということですが、ポップでおもしろかったです。内容としては、むかしからありますね。野暮で冴えない男と、めっぽういかした美少女の、アンバランスなカップル物語で、インターネットいう背景を別にしますと、むかしからある古典的恋愛テーマでもあります。

インターネットには、危険な犯罪がらみのニュースばかりが話題にあがりますが、こういう人と人のやさしさがいい結果をもたらすこともあるんだ、ってそういう気持ちよさも、見終えたあとの感想としてあります。

役柄はかなりデフォルメされているので、現実感は乏しく、そのためにメルフェン・タッチな楽しさがあります。電気とパソコンの街=秋葉原が恋愛の舞台になるのもおもしろかったです。最後は、万事メデタシメデタシ!!




■「フライ、ダディ、フライ」(2005年 監督:成島出

『フライ,ダディ,フライ』VISUAL BOOK ~スンシンの哲学~

  主演:岡田准一堤真一松尾敏伸

大事な娘が傷つけられ、怒って乗り込んだ高校で、おっさん・鈴木一と高校生パク・スンシンは出会った。憎き相手を倒すため、おっさんは会社を40日休むことにし、パク・スンシンはおっさんを鍛えるはめに…年齢も環境も違う2人が大切なものを取り戻す夏休み!! (「ギンレイ通信 vol.84」より)

要するに、街のチンピラ高校生に自分のかわいい娘が暴力を受けます。暴力というのは、性的なものではなく、文字通り顔面をしたたかに殴られるという暴力なんですが……。その犯人であるチンピラ高校生の父親は、いずれは総理大臣にもなろうという衆議院議員。そんな国家権力の味方を背負っているためか、チンピラ高校生は、暴力事件を起こしても無罪放免、世の中をなめきって反省のキザシもない。

社会的にも、腕力にも、立場の弱い父=鈴木一(すずき・はじめ、堤真一)には、彼らに抵抗する手段がみえない。苦しんだ彼は、怒りの矛先をあらぬ方向へもっていき、原因を「母親の監督不行き届き」のせいなんかにしますから、妻にも娘にも軽蔑されてしまいます。彼は、自分の無力を認める勇気すらもっていないのですね。これは、現代の父親一般の精神的な脆弱さをついているのではないでしょうか。

つまり、娘が傷だらけにされた父の汚名挽回が、この映画のテーマです。

生い立ちの不幸から「腕力」だけを信じる高校生=パク・スンシン(岡田准一)の強烈な特訓メニューをこなしながら、父=鈴木一は、身体を鍛え、社会的な不合理と、原始的な恐怖=暴力に立ち向かいます。ふやけたサラリーマン生活を、何の疑問ももたず送っている鈴木一が、特訓に耐え、心身ともに少しずつ逞しくなっていく過程が、この映画の見せ場。

サラリーマン=鈴木一は、チンピラ青年との決闘に勝って、再び妻と娘の信頼をとりもどすことができるでしょうか……。