「家族全員、秘密をもつのをやめましょう!」
これが京橋家の母(小泉今日子)の方針です。
ところが、実情は家族全員秘密をもっている、というのが「空中庭園」のメイン・テーマです。
これは原作を含めてですけど、いまさらびっくりするようなテーマではないですよね。恋愛や性のことまで、家族で包み隠さず話しましょう、なんて、気色悪いでしょう。ところが、この家族は、自分が<どこでしこまれて誕生したのか>なんて話までしています。
みんなの秘密が次第に明らかになるにつれ(しかし、想像を絶する秘密でもなんでもなく、ありきたりに起こりうる恋愛・浮気に関することがほとんど)、母の精神が次第に壊れていくというのが、どうもふるくさい。
小説は、さほど露骨なしかけをしていませんが、映画では精神の限界に達した母に、真っ赤な雨が降りかかります(心境を描いた幻想シーン)。血の雨を身体中に浴びながら、小泉今日子がしつこく「うわーうわーうわー」と叫ぶのを聞いていると、気持ちがひえびえしてきました。
父が浮気するふたりの女性よりも、ただの主婦であるはずの小泉今日子が、もっとも魅力的です。美しい小泉今日子を見ていると、夫婦に5年も性的な交渉がない、といわれても、リアリティが感じられません。小泉今日子の役者としての魅力が空回りしているようにも、おもえました。